日夜WEBに関するさまざまな相談が持ち込まれる。その中でも他者が制作したWordPressを修正していると、普段プロ制作者としてはなかなか気が付かない事が見えてくる。入門者向けの小ネタ集。
ケース1:セミナーなどでWordPressを学び制作する
セミナーなどへ行きゼロからWEBサイトの制作を学び、運用している中小企業や個人事業主の担当者からの相談は常に多い。今時シンプルなHTMLとCSSでゼロからWEBサイトを作ろうなどと言っているセミナーはなく、ほとんどが「CMSを使って、無料で店のWEBサイトを作りましょう」とうたっている(ここでCMS=WordPressの事なのだが、何故かこの種のセミナーではWordPressと言わずCMSという)。
自社のWEBサイトを作りたいが制作費がない。自分で作るには敷居が高すぎる。いろいろ検索しているうちに数万円の受講料で作り方を教えてくれて、その後の更新も制作会社などに頼まずにできる。それならWordPressの作り方セミナーを受講してみようとなる。
セミナーを受講すると、まずプロバイダー(Xserverが多い)と契約。WordPressを設置してから、無料のビジネス・テーマ(Lightningが多い)とプラグインをインストールし、メニュー、自社紹介ページ、商品やサービスを紹介するページなどを作るのが一連の流れだろう、多分。
ただし、主催者は完成後WordPress本体、プラグイン、テーマの更新通知が届いても更新はしないように指導する。
これはWordPressを設置し、自社のWEBサイトを制作するまでがセミナーの目的であり、運営までは含まれていないからだろう。更新をすると不具合が起こる可能性があり、不具合が起こったら素人では手に負えなくなるからである。セミナー主催者としてこれは正解。そこまで面倒を見るのなら月数万円の運営の契約をしてくれという事なのである。
始めは問題なく運営出来て、コンテンツもどんどん増やしていくことができる。しかし、しばらく経つとダッシュボードにWordPress本体の更新通知が届く。更新はしないように言われているので、無視していると今度はテーマの更新通知が届く。それでも無視していると、今度はプラグインの更新通知が複数届くようになる。この段階で無視している事は正しいのか不安になるが、更新してWordPressが壊れWEBサイトが閲覧できなくなるのはもっと困る。この段階でうちに相談に来ることが多い。
当然更新はした方が良いし、常に最新版を使うべきだ。それは一番にセキュリティの問題、二番目に不具合の解消のためである。
そんな話をしてからバックアップの方法、そして各更新の仕方を教える。
セミナーで作り方だけを教えるのだけではなく、その後の更新方法、そして更新しないリスクも教えるべきだと思うのだが、やはり難しいのだろうか。
ケース2:自社WEBサイトの構成を把握していない
今どきのレンタルサーバーには、WordPressの簡単インストール・サービスが付いている。WordPressの公式サイトからデータを落として、FTPクライアントを使ってサーバーにアップして……などという面倒なことはしない。レンタルサーバーのコントロールパネルを使って簡単にインストール出来る。
WordPressをサーバーにインストールして基本的な設定が済んだ。次にやるのはサイトマップ作りである。しかしセミナーでは時間の関係なのか、それをやらずいきなりトップページを作り出す。運営していると徐々にページが増え、全体の構成が見えなくなり、同じページをループしている事が多々ある。WordPressはカテゴリーページなどを自動で生成するので余計分からなくなり、目的が同じページを何ページも作ってしまうこともしばしば。
そこでサイトマップの有用性を伝え、一度全ページをふかんで見て整理する事を勧めた。
ケース3:知り合いのデザイナーに無料で作ってもらう
WordPressメンテナンスの依頼。
内容が古くなったコンテンツの削除と、レスポンシブ・デザインなのだがスマートフォンで観た時にレイアウトが若干崩れるので修正したいとの事。
ソースを見てみるとWordPressで作られている。テーマは依頼主の会社名になっているが、何かのテーマを変更したものだろう。良くある事だが、既存のテーマをカスタマイズし、テーマ名を変更するのは良いことだろうか。管理・運用の面からすると良くはない。テーマの更新が出来ない。テーマの更新はバグフィックスやセキュリティ向上のためであるのだから。
その他いろいろ調査してWordPressで作られている事を報告すると「WordPress何それ?」と答えが返ってきた。知り合いにデザイナーがいて無料で作ってもらったらしいのだが、遠方に住んでいるらしく、また忙しくて依頼しても対応が遅く困っているとの事。ここに無料で制作する危険がある。友人や知り合いが無料で何かを作ってくれる。しかしWEBサイトの場合は作るよりも、むしろ運営するほうが面倒だ。会社公式のWEBサイトであれば頻繁に修正や更新作業が必要になる。このデザイナーも始めは気軽に引き受けたが、度重なる依頼に無料でやるのがバカバカしくなったのであろう。依頼する方もされる方も、プロに無料で何かを依頼する時はそれなりの覚悟が必要。
依頼内容自体はCSSを修正して無事に終わった。しかしブログ部分を見てみると、WordPressで構築されているにもかかわらず、アメブロを埋め込んでいた。どうやらデザイナーがWordPressでブログ・ページを作る方法が分からなかったようなのだ。アメブロで結構な記事数を書いており、営業にも役立っているというだけに、自社WEBサイトが全くSEOに貢献していない事が残念。
それ以外にもデザイナーがWordPressの事をよく分からず、単にWEBサイトのテンプレートとして利用したようで、WordPressの運用方法を伝えていなかった。当時WordPress本体の最新ヴァージョンは5.2であったが、更新の止まった3.6のままで一度も見られた事がないダッシュボードには目をそむけたくなるような数のあらゆる更新通知が届いていた。一応リスクを伝えて作業は終了した。
まとめ
会社のWEBサイト(ホームページ)は、プロに依頼した方が結果的によい。
と、言いたいところだが実際問題、制作に数十万円払い、運営に毎月数万円払うのも厳しい企業や店がほとんどだろう。WordPressのテーマを使えば、見栄えの良いWEBサイトは出来るし、私の見てきた限り自社で制作したにも関わらず、センスの良いWEBサイトが多いのも確か。金は掛けられないが、本気で運営したいのなら、書籍やWEBで担当者自ら常に最新情報を受け取る事が必要だろう。