書籍装丁制作「サブカルチャーの心理学」— 書籍の装丁方法

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大学の教科書にも使用する書籍の装丁を担当した。

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書籍の内容

アニメ、マンガ、腐女子、鉄道、レコード、オカルト、ジャニオタなど、様々な現代若者の文化を分析し、今まで「遊び」とみなされていた行動から、人間を見つめ直す新しい心理学の提案の書。
分類としては、心理学であり大学で教科書としても使用する専門書である。もちろん一般書店でも販売する。

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デザインの前提条件

今回依頼があったのは装丁である。具体的にはカバー、本体表紙(カバーを取り去った状態)、本文大扉、帯、これら一式の事を指す。今回帯はなし。本文のデザインと組版は担当外。
仕様:A5判 並製 256ページ ソフトカバー

編集者との打ち合わせで「デザインは文字のみ」「本文の内容が多岐にわたりまとまりがない」「文字を図案化」「某人気アニメに使用されている特徴的な極太フォントを使用」「教科書のようで教科書でない」「サブカルチャー/カウンターカルチャーを扱うので70年代的な装丁」などのキーワードが出た。
ちなみにレコードコレクターの章があり、読んでいて私の事のようであり身につまされた。この章があるから私に発注したと編集者は言っていた。この著者は私よりも年上だが、コレクションには苦労されているようであるが、私はアナログ盤、CDを含めるとその数倍を所有してどうにもコントロールできなくなっている。

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サムネイル制作

メモ程度に思いついた案をためらわずに描き出す。もちろんこれは編集者には提出しない

この段階では、類書のデザインを参考にしながら取り敢えず思いついたアイデアをどんどん出してゆく。デザイン案が決定するまでは、表1のみを考え、束(背表紙)、表4、袖ほかの部分は考えないのが一般的。デザイン案に必要な要素は、書名(メイン、サブ)著者名、内容が多岐にわたるため表1に目次を配置する。これを念頭に深く考えずサムネイルを描く。

ラフデザイン案制作

描いた多数のサムネイルを見ながらラフデザイン案を作成する。編集者にラフデザイン案を見せる際に、本当は完成デザインが100%とすれば、50%か60%くらいの出来のものを見せるのが理想だ。ラフデザインの段階で、あまり詳細に出来たものを編集者に見せると印象が固定化されてしまい、デザイナーの頭の中にあるイメージとのかい離が起きてしまうからだ。そうなると後から変更は難しくなる。

しかし50%か60%のラフデザイン案を70%や80%にする場合、編集者とのやり取りがその分多くなり工数も増す。要するに時間が取れないので、今回も80%くらいの完成度のラフデザインを作成した。
ちなみにここまでの製作期間は2週間。

ボツ案はあくまで「ボツ」なのでぼかしている

ラフデザイン案として3案を提出。この段階で20案位出すデザイナーもいると聴いたことがあるが、そのデザイナーはデザイン案を絞りきれないだけであり、サムネイルを具体化しただけ。数を出せば相手も喜ぶだろうと思っているのかもしれない。デザイナーの役目は情報を整理し、多くの案を適切にまとめ相手に提示することでもある。

A案は「多岐にわたる内容」をタグ化したものを羅列した。B案は某人気アニメで使用されている極太フォントをセンターに置き、内容に沿ったオブジェクトをフォントにまとわり付くように配置。C案は70年代サブカルチャー的な装丁のオマージュ。工作舎的なデザインでかなり戸田ツトムさんぽい。

デザイン完成

著者、編集者と何度かやり取りをして、C案に決まったのでラフデザイン案をブラッシュアップしてゆく。ラフデザインC案が決まってから完成するまでに10回ほどのやりとりをして、そのたびに修正・追加・削除を繰り返してゆく。
背景のグラデーションはありがちなので削除。70年代の工作舎デザインと言えば、本文の抜粋を文字ではなくオブジェクトとして配置してゆく手法が特徴。本当に70年代の書籍だと思われると読者が混乱するとの事でこれも削除。確かにそうだ。

完成したカバー表1デザイン

背景が白、文字は全てスミ(黒)。この状態でメイン・タイトルもスミであると目立たず、完全にモノクロのカバーになるので、メイン・タイトル文字に色を付けることにした。表1左下に配置した、本文の目次を見ても内容が多岐にわたることが分かる。多岐にわたるが、それぞれ少しずつ関連がある内容を徐々に色が変わるグラデーションで表現した。グラデーションがきれいに発色するように、表面処理はグロスPP貼り。

カバー表4デザイン

複数の著者に編著者が1名。表1には目次がすでにあるために、これ以上の文字は入れられないため、複数の著者名は表4に配置することにした。表1には代表の編著者の名前があり、これと関連付けるために著者名の上下にけい線を入れ、表1を見た読者の視線を表4に持っていくように工夫した。

本体デザイン

本体表紙には目次を入れないので文字の配置を調整。一色の指定があるのでスミを指定。本体表紙の紙にこだわりはないので編集者に適当なものを選んでもらった。

本体大扉デザイン

本体大扉は、本体表紙表1文字の配置バランスを考えながら変更。

大学の教科書でもあるので、真面目な内容だが決して堅くなく、ソフトカバーという形態もあり、各章は独立しているので読みやすい。

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