デザイナーに「途中でいいから見せて」は禁句だった

WEBデザイナー、ロゴデザイナー、チラシや書籍など紙媒体のデザイナー、門外漢だがアパレルデザイナーなど、デザイナーと名の付く職種の人は皆経験していると思うのだが、発注者に「途中で良いので見せて」と言われた事はないだろうか。
発注者としては「高い金を払っているのだから失敗はしたくない」「方向性が大きく異なると困る」「納期に間に合うか心配」との理由から、このような発言をするのだろうが、それを言われたデザイナーからすると「見せても意味がない。むしろ試行錯誤中のデザインは、余計な印象を持たれたくないので見せたくない」のが本音。少しイライラもするし。

「デザイン制作の途中が見たい」の心理

発注する側の心理としては、以下のような理由だろう。

  • 納期までに完成するのか心配なので、進捗状況を確認したい
  • 完成したものが想定したものと大きく違うと困る
  • とりあえず見てみたい

コンビニで買物をするのとは違う、決して安くない金を払うのだから、失敗したくないという気持ちは分かる。それに商品のキャンペーン告知用の宣伝媒体制作などを依頼したら納期は厳守で、一日でも遅れたら大損害が出る。そんな気持ちから途中経過を知りたいのだろう。特に初めて仕事をするデザイナーであれば。

定量的な作業

発注する側の心理に対して、制作途中の作業者心理はどうであろうか。

例えばプログラマーの仕事の場合を考えてみる。要件定義が定まり、仕様も決まった。そしてプログラムを組み始める。プログラムを少しずつ組んでゆく作業は、積み重ねの作業であるから、スタートからゴールまでは一直線である。プログラマーによって、作業が早い遅いはあるし、プログラミングのスキルも様々なので、コードの書き方によるプログラムの処理の早さなど、品質に差はあるだろう。しかし発注者とプログラマーが想定しているゴール(完成)は同じ。それは作業の進捗状況が数値化できるので、定量的な作業と言える。

進捗状況を数値化できる、定量的作業

プログラマーの開発時間に従って、作業量も増え完成に近づく。発注者に「途中でいいから見せて」と進捗状況を聴かれても「約60%完成しています。」、「登録者用のマイページは完成しています。」と進捗がどこまで進んだかを答えることができる。

定性的な作業にそれは起こる

プログラミングの様な定量的な作業に対して、デザイン制作という作業は定性的な作業と言える。

進捗状況を数値化出来ない、定性的作業

制作者によって多少異なるだろうが、デザイン制作作業としては、発注を受け、打ち合わせなどを済ませたら、アイデア出しをして、実際の制作作業に入る。
発注者と制作者の方向性のズレを修正するために、完成までの間に2、3回は途中経過を見せる。

サムネイルやワイヤーフレーム
→ラフデザイン
→デザイン完成


そしてその都度、発注者とやり取りをして、完成に向けてデザインの方向性を決め、修正を重ねる。この一連の作業の流れは、時間と共に作業量が重なってゆくプログラミングとは違い、作業を重ねてゆくのに連れ、発注者やデザイナーの求める完成形に近ずけてゆく作業となる。
ゴツゴツとした原石から、徐々に姿を現し完成する彫刻のようなものだろうか。

少し規模が大きいデザイン制作だと、サムネイルからラフデザインの間、ラフデザインから完成の間が時間的に空く場合がある。発注者も間が空き不安になるためだろうか、デザイナーがイラッとする発言をここでついしてしまうのだ。

「途中でいいから見せて」

その言葉はデザイナーにとって禁句だった。上の図にあるように、それぞれの作業間は試行錯誤中であり、内容はゴチャゴチャであり、見せても意味がない。自らもダメだろうなあというアイデアを試してみたり、色のバリエーションや各要素の大小や配置をいろいろ試してみたりの時間である。

経験が浅い頃は「そういうものなのだろう」と思い、見せられるように整形して(これもまた余計な作業なのだが)それを提出すると「ここはこの色ではダメ。この画像はもう少し大きく。」というようなことを言われる。試行錯誤中なので、それはやろうと思っていましたとは言えず、イライラしたものである。
今では、サムネイルやワイヤーフレーム、ラフデザイン案を各3案出して……というような進行を事前に説明するので、このようなことは少なくなった。それでも初心者デザイナーや気の弱いデザイナーは今でも言われて、イライラしていることだろう。

デザインを発注する人へのお願い

WEBや紙媒体に限らず、デザイナーに仕事を依頼する際に、発注者は予め決められたサムネイルやラフデザイン以外での途中経過の確認は止めたほうが良い。もちろん予定日になっても提出物が届かない、デザイナーに連絡が取れない(結構ある)などの場合は別である。
デザイナーに特段気を使う必要はないが、制作に集中するためにも是非お願いしたいことである。

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