書籍の装丁/ブックデザインの方法と実績の紹介 ━ Google AppSheetではじめるノーコード開発入門

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GoogleAppSheetではじめるノーコード開発入門

ノーコード、ローコードによるアプリ開発がブームである。類書がまだ少ない中、書籍の装丁/ブックデザインの依頼をいただいた。
書籍タイトルは「Google AppSheetではじめるノーコード開発入門」。
その制作実績の紹介と、制作工程を解説する。

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仕様

今後、話題のノーコードローコードに関する書籍は、多く出てくるであろう。しかしまだ類書はす少ない。今回の書籍は、先月装丁を担当した、Power Appsではじめるローコード開発入門と同系統の書籍である。

仕様は前回と同じ。
判型:B5変形
装丁:カバー、オビ、本体表紙、大扉の制作一式

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制作工程:1 アイデア出し、サムネール

デザインの方向性は、シリーズとまではいかないが、Power Appsではじめるローコード開発入門と同傾向のものが希望との事。
デザイン案の一つは、前回のデザインをそのまま流用するとして、その他の案をなるべく前回の方向性から外れない範囲でアイデア出しをする。

サムネイル
サムネールの一部

いつも通り、類書を参考にしながら、浮かんだアイデアをどんどん紙に描き出してゆく。
Google AppSheetの公式サイトを見ると、どうやら紙飛行機がシンボルマークのようだ。そしてその紙飛行機のシンボルマークは、#FFFFFF、#4285F4、#1967D2、#174EA6 の4色が使われている。紙飛行機と使われている青色、そしてGoogleのロゴカラーをイメージしながらふくらませる。

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制作工程:2 デザイン案

前回同様ワイヤーフレームのような、色付けをしない線画のみのラフデザインを、サムネールの次に制作して、フィードバックをもらおうかと思ったが、前回色付きでないと決められないと言われたのと、今回極端に制作時間がないので、今回は省略した。
そういう訳で、いきなりラフデザインである。しかも時間がないためほぼ100%に近いデザイン4案を制作した。

ラフデザイン案
ほぼカンプ状態のデザイン案

前回のデザインを踏襲したいとの注文から、タイトル文字を中心とし、イラストや画像は入れないか、または入れても控えめに配置するようにした。

  • A案:前回のデザインをそのまま流用し、色替え、文字の調整、紙飛行機は実際に作りそれを撮影したものを加工して配置。
  • B案:近年のビジネス書に多い文字を大きく配置し、丸ゴシック系のフォントでまとめた。Google AppSheetのフォントは公式サイトにならいGoogleフォントを使用。文字だけだと、あまりにあっさりしすぎなので。背景に大きく紙飛行機の線画を配置し、さらに文字と重なる部分にオーバーレイを施した。
  • C案:白地に文字の配置ばかりのデザイン案なので、思い切って全面に派手なグラデーションを敷く。しかしやってみるとヴィヴィッド過ぎてきつく、背景を2/3に縮小して文字を配置。アクセントとして紙飛行機の線画を載せる。
  • D案:公式サイトをみると、紙飛行機の折り方をアイコンにしていた。これを元ネタに、紙飛行機を折る手順を線画の状態で、目立たないように下部に配置した。これは個人的に面白いアイデアだと思う。
実際に折ってみて作った紙飛行機

シンボルマークを見ながら、実際に紙飛行機を折ってみた。しかしシンボルマークのような紙飛行機は、現実的に折れないことが判明。仕方ないので無理やりそれっぽく折る。

制作工程:3 大扉制作

デザインはB案に決定。
印刷の順序として、まず本体中身が一番初めなので、いつも通り大扉の制作に入る。
デザインB案を元に、全体を中央に小さくリサイズ。そして、グレースケールに変換後、1色でもコントラストがはっきりするように色の調整をする。

大扉
大扉デザイン

制作工程:4 カバー制作

この段階で、デザインB案からカバーデザインを制作し、さらに同じドキュメント上にオビ用レイヤーを追加する。
既に提供されているオビ原稿をラフに配置し、文字量を見ながらレイアウトを考える。これはオビが付いた状態で、カバーの見え方を検討する意味がある。

大方できた所で実寸プリントアウトし、壁に貼り眺める。

プリントしたデザイン
プリントアウトして壁に貼る

モニターの中だけではなく、実際紙に印刷された状態で見て確認し、壁に貼りしばらく時間を置き、度々眺める。いつもはデザイン案を検討する段階で、全てのデザイン案を紙に出力して貼り、数日間放置し、別の作業の合間合間に見ると、次々と新たなアイデアが生まれてくる経験上、昔からこうしている。これは紙媒体のデザインに限らず、WEBデザインでも同じ。

カバーデザイン
カバーデザイン

全体をCMYK変換したキーカラーである3つの青色でまとめた。
オビで隠れる部分には、表4に少し大きめの紙飛行機を配置。その上にある小さな紙飛行機との対比で立体感を出した。またソデ部分には、ボツ案になったデザイン案から、折り紙の折り順を示したイラストを配置。表1ソデから表4ソデを順に見てゆくと、紙飛行機が完成するというわけである。ただし、先述したように、この紙飛行機は現実的には折り紙では実現できないので、かなりごまかしている。

制作工程:5 オビ制作

装丁家やブックデザイナーで、カバーデザインは素晴らしいが、オビはやっつけ仕事の人は結構多い。オビは付属品で捨てられるものという前提なのだろう。それは間違いではない。Amazonなどのネット書店でも、書影には基本的にオビは付いていないので、マーケティングに対しても影響はないだろう。現在では、実際に手にとった人しか、見ることができないものである。しかし私の場合は、広告デザイン制作も長年やっているので、ここで売らないとならないという気持ちが強く、オビ・デザインは手を抜けない。

オビのサイズによる違い

今回オビのサイズを上図左の高さにした。通常は著者名を見せるため、上図右のようにするのだが、これだと小さな著者名の左右の空きにより、安定感を損なっているように感じる。そのためオビを上図左の高さにして、隠れてしまう著者名はオビの上に記載するようにした。

カバー+オビデザイン
カバーとオビデザイン


前回はキーカラーの紫のほぼ補色である、オレンジをオビの地色に使ったが、今回は青色のほぼ補色である赤に決めた。ただし赤といってもキンアカ(M100+Y100)だと、下品な感じになるので、少しイエローを抜いた、M100+Y50と上品で堅固な印象にした。
メインキャッチの配置をいろいろ試行錯誤してみた結果、4行ごとに切れば、それぞれの段落が目に入り印象的になる。“ノーコード”はメインキャッチの中でも重要なキーワードなので、ここだけ太いゴシックを選択。

長いサブキャッチコピーは、そのまま配置するとメインキャッチとのメリハリがつかなくなり流れてしまうため、初めは周りを細いケイで囲んだ(壁に貼った状態の画像を参照)。しかし、完全に囲むと今度はメインキャッチとの関連が薄くなり、完全に独立した文章になってしまう。
そこで、横のケイを取り、上下のケイのみとし、さらに文章の横幅より少し短くし、端を丸める処理をした。

表4は本書の目次だが、今回文字数が少ないので、ケイ線を引きデザイン処理を施した。

表1オビは文字だけになるので、ここでもボツ案になった、撮影した自家製紙飛行機を右下の空白部分に配置した。

これで完成。

オビデザイン
オビデザイン

制作工程:6 本体表紙制作

ここはいつ通り、カバーデザインのリサイズ版を配置。そして、前回と同様シンボルとなる紙飛行機の線画を手書き風に加工。色はキーカラーに近い鮮やかな水色(DIC639)を選択。
特色版なので、入稿データは以下のようにスミ一色で作成。

本体表紙デザイン
本体表紙デザイン

完成

GoogleAppSheetではじめるノーコード開発入門
完成したカバーとオビ

見本誌が届く

見本誌が届いたので、早速チェック。

表1
帯が付いた表1
オビが付いた表4
オビが付いた表4
カバー表1と束
カバー表1と束
カバー表4
カバー表4
本体表1と束
本体表1と束
本体表4
本体表4
大扉
大扉
カバーソデ
カバーソデ

ソデに印刷された、紙飛行機の折り方がアクセントになっている。オビを取らないと見えないので、実際に気がつく人は少ないだろう。

今回の装丁作業は、納期まで非常に時間がない状態だったが、よくできたデザインだと自負している。
現在Google AppSheetに関する唯一の書籍なので、興味のある人はぜひ購入して、参考にしていただければ幸いである。

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