YouTubeを初めSNSでは動画によって発信することは、PRする上で個人でも企業でももっとも効率的な方法と言えるだろう。その動画作成を初心者にもわかりやすく、企画、絵コンテの作成、撮影、編集そしてYouTubeへの公開まで解説した本「ゼロから学ぶ動画デザイン・編集実践講座」の本文デザイン、本文DTP組版、カバーの装丁まで1冊まるごとデザインを担当した。
本文フォーマット案の作成
今回はカバーなどの装丁の他に、本文のフォーマット・デザインとDTP組版も担当した。
本文フォーマットのメモ
本文フォーマットに関しては、今回サムネイルのようなものは描かずInDesign上でラフデザインを何案か作った。本の概要と第1章のテキストをもらっているのでそれらを読み込みメモをとった。箇条書きにすると以下のようになる。
- YouTubeアップまでの全工程を解説している
- 動画作成の初心者向け
- スクリーンショットを豊富に掲載する
- 専門書ではなく入門書なので柔らかい印象
- 本文は4色
- 判型はB5変型判(230×182mm)
- 全10章
- 構成:Chapter>Section>段落1>段落2>段落3 の順
- 文字:13級 9歯
1行の文字数、行数を決め、その後天地と小口・ノド空きを設定して版面を決める。
本文フォーマット制作
本文フォーマット案として1章分を3案作成した。
A案:細い線と薄い水色をベースに装飾は抑えめにしてミニマルなデザイン
B案:落ち着いた桃色をベースに随所に角丸や円を多用し初心者向けの優しいデザイン
C案:明るい緑色をベースに太い線で見出しの背景などを統一した引き締まったデザイン
いずれの案も文字回り、版面、天地小口ノド空きサイズは同じ。
本文フォーマット決定
提出した3案のうち角丸や円を多用したB案(上図2点)に決定した。色使いも渋目の桃色をキーカラーに各色渋目で目に痛くない落ち着いた色にした。また図版はにはスクリーンショットが多く、スクリーンショット内の文字が見える程度の大きさにした。コンピュータマニュアル本ではスクリーンショットが小さく「図が小さくて見えない」という読者の不満が多い部分でもあるからだ。
カバーデザインのサムネイル制作
初心者向けなので読者がカバーを見て「わかりやすそう」「難しくなさそう」と感じられるようなデザインを考える。いつも通り思いつくままにメモのように描いてゆく。文字を主体にしたもの、スクリーンショットをちりばめたものなど。
今回AIによるサムネイルも作ってみた。
プロンプトの入力が悪かったのもあるだろうがサムネイルとしてはまったく使えない。ゴテゴテしていて洋書っぽい。再度日本の読者向けで地を白に指定してみた。
日本語が苦手なのは仕方がないが何だか今ひとつの出来。使えない。もう少し条件を吟味してプロンプトの研究が必要なようだ。
そういうわけで結局手描きのサムネイルを参考にしつつラフデザインを制作した。
カバーデザインのラフデザイン制作
今回カバーデザインを制作する上で以下のことを考慮したうえでデザインした。
- 書影が小さくてもタイトルは読める程度の大きさ(EC対策)
- 説明的な図またはイラストを配置する
- 初心者向けなのでタイトルは丸ゴシック系のフォントを使用
- 優しく手に取りやすい印象を与える
3案作り、オビを付けた状態のものも制作した。1案はカバーとオビの色を反転させたものを制作。
結果一番左の案が採用となった。
本文大扉制作
印刷所へ入稿する順番でまずは本文の大扉を制作。カバーを縮小しレイアウトをし直しただけでも良いのだが、カバーの明るい黄緑色であるので淡い桃色を主色にカバーの補色を使った。
本体表紙制作
こちらもカバーの補色で桃色1色にした。表1が「5」のようなデザインになっているがこれは単に1色なのでカバーのオブジェクトを1色に変換しただけである。特に意味はないが、意味があるようでいいかもしれない。
カバーとオビの制作
カバーとオビの文字のかかり具合などを慎重に見ながら同時にデザインを完成させる。この状態で編集者に文字校正を依頼する。
本文内で使われているいくつかのスクリーンショトを使い作業の始まりから終わりに並べ、奥から流れてくるようなイメージを作った。表面加工はマットPP。
カバーと同様に本文中に掲載されているスクリーンショットを使い、オビはカバーと異なり具体的に見えるようにした。またカバーとオビの文字組みが横組みなのに対し、カバーのメインキャッチ「『良い動画』を作るためのノウハウ満載」を縦組みにして目立つようにした。オビ表4には大きく目次を並べる。書店で本を手に取った時に意外によく見るのが目次だからだ。表面加工はマットPP。
見本誌が届く
数週間後見本誌が届いた。
カバー、オビ、本文すべて問題なく完成した。お疲れ様でした。
SNSなどにアップするためのショート動画の企画からテーマの決め方、絵コンテの描き方から撮影方法・編集。最後にYouTubeにアップするまでをワンストップで初心者にもわかりやすく解説した本書。これ1冊あれば個人での制作はもちろん、企業のPR動画の制作まで間に合うので手元に置いておけば安心だろう。