AI学習は悪なのか、それを認めないSNS「Cara」はクリエーターにとって救世主なのか

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CaraのExplore画面
CaraのExplore画面 https://cara.app/explore

「アーティストによるアーティストのためのSNS」Caraが話題だ。

タイル状にすき間なく埋められた画像がExploreのファーストビュー。スクロールするとInstagramのような単一カラムの投稿が並べられた独特のUIデザインである。

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CaraはAI学習から逃れるための駆け込み寺

Meta社が運営するMeta AIにおいてInstagram、 Facebookの公開投稿をAI学習に利用していると昨年報道された。このことがなぜか半年以上たった最近広まり、自分の作品がAI学習に使われたら困るという人の受け入れ先としてCaraが一躍脚光を浴びたのである。ちなみに現在Caraに掲載されている作品はイラストのみのようだ。

CaraはAIで生成された作品をフィルタリングした上で掲載を許可しない。そして掲載されている作品をAIの学習には利用しないと宣言している(Caraについて AIについてのスタンス)。AI学習に利用されたくないというクリエーターが最近Caraをポートフォリオ(作品集)として利用しているようだ。もちろんAI学習に関係なく利用している人もいるだろう。それまではInstagramを公開ポートフォリオとして利用していた人が多いようだが、CaraとInstagramには大きな違いがある。Caraにアカウントを持つ人はクリエーターだ。一般人はいない。それに対してInstagramは一般人がほとんどであり画像に特化したSNSという特性上クリエーターが利用してきた経緯がある。公開ポートフォリオとして利用するクリエーターは何が目的なのか。それはもちろん多くの人の目に自分の作品が触れ作品の制作を発注または購入してもらうことだ。

Cara meta タグ
Caraのmeta property

Caraのrobots metaタグにはしっかりnoai,noimageaiの記述がある

Caraには「Find jobs on Cara」というページがある。自分の作品を見てもらい仕事を探すことができる機能だ。そこには自己紹介が書かれている。これを見るとCaraはAdobeが運営するBehanceに近いのかもしれない。Behanceの方はより幅の広い種類のクリエーターを扱い、さらにクリエーターが仕事を得やすいような仕組みになっている。Caraの方は下にスクロールするフィード形式のUIであり、求めているイラストレーターを見つけるのは難しい。このあたりはタイル形式のBehanceの方が見つけやすい。Caraは現在ベータ版なので今後UIデザインの大きな変更はあり得る。

ただBehanceの方はAdobeが運営しているのですでにAI学習に利用されている可能性はある。その点でもCaraに移行するクリエーターが多いのかもしれない。しかしいずれにせよInstagramの圧倒的なユーザー数と比べると露出が少ない分制作依頼は少なくなるだろう。

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今後のAIとクリエーターの付き合い方

この記事を書いている途中でAdobeの機械学習に関するFAQが問題になっている。
コンテンツ分析に関する FAQ
Cloudに保存したデータが機械学習に利用されるようだ。もちろんこの機能を無効(オプトアウト)することはできるのだが、これがクリエーター反発の大きな原因になっている。
ただこのFAQを読むとわかるのだがAI学習に使うことによりソフトウエアがより使いやすくなることは確かだ。もちろんFireflyのような画像生成AIもより精度が増す。そしてこれはAdobeだけの話ではなくGoogle、Microsoft、Apple、Amazonなどもはや生活するのにはなくてはならないサービスでAI学習が行われると考えたほうがいい。だから学習されないように機能を無効にして、Caraを使ったところですでにあなたが制作したデータはほぼAI学習の餌になっているのだ。

先日NHK BSP4Kで放送されていた現代美術家・村上隆のドキュメンタリーを見た。

夢見る“怪物” 村上隆 - フロンティア
世界を舞台に活躍するアーティスト、村上隆の大規模個展が京都で開催。制作過程を半年にわたり密着取材。独自の工房システムやAIを取り入れた技法など創作の秘密に迫る。現代アートの最前線を走り続ける村上隆が8年ぶりに京都で大規模個展を開催。テーマは...

ここではアイデアを得るために村上隆の絵をAIに学習させ、その絵のバリエーションを数多く出力させていた。出力された絵には元の絵には存在しないパーツが勝手に描かれている。これを村上は面白がっていた。村上自身のテーマはエラーだからだ。その絵をさらに切り貼りして気に入るように調整する。そして新たな絵ができる。この番組の収録は2023年に行われていたので著名な美術家としてAIを取り入れたのはかなり早い。このような使い方もあるのだ。

ちなみに商業デザイナーである私がデザイン制作を行う場合に、一番悩み時間がかかるのがアイデア出しの工程である。この時にAIを使いアイデアを出してもらっているが、自分では思いつかなかったアイデアが出てきて、そのまま使うことはないがアウトラインや断片を使うことがある。

イラストレーターであれば自分の過去のイラストを学習させ、「(学習させた)このイラストのタッチで◯◯◯をしているイラストを描け」と指示すれば自分が描かなくとも同じタッチのイラストがAIによって生成される。これを手抜きと取るか合理的ととるかである。ここまで画像生成AIが使われるようになってまだ2年弱だ。今後新しい表現手法として考えもつかないAIの利用方法が生み出されるだろう。

作品にAIを使うということにクリエーター自身を含め多くの人が誤解している。まず思い浮かべるのは画像生成AI画面に向かって「美しい1人の女性、長髪、茶髪、キャミソールとスカートを着ている……」などのプロンプト(文字)を打ち込んで画像が生成されるのを想像しているのではないだろうか。その結果「あんな文字を打ち込んで生成された絵なんて絵ではない」と批判しているのだろう。もちろんそれは画像生成AI利用の一つだ。しかし村上隆の例のように自分で描いた作品を学習させて、新たな作品を生成させることもできる。ちなみに学習させる段階で自分の作品を他人に利用させないようにもできる。

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AI学習に作品が使われることは悪なのか

現代のクリエーターは作品を制作しネットに一切出さないということはまず考えられない。すべての作品を出さなくても代表作など一部の作品はネット上に掲示しているだろう。それがたとえ自身のWEBサイトであってもGoogleやBingなどにクロールされているしきっとAI学習に利用されているはずだ。そこでCaraのようにmeta robotsタグを使い拒否するか、またはGlazeのような画像生成AIプロテクターを使いノイズを載せるか、それで効果があるのかはわからない。ただ今さらAI学習に利用されたくないと言ってもすでに遅い。どこかで利用されていると考えるほうが自然だから。

特に日本ではまだ生成AIに関する法整備は不十分だ。元々それが原因でこんな騒ぎになっている。だから制作業務でNDA(機密情報保護)を交わした時にAI学習は抵触するのかしないのか私にはわからない。「作品がコピーされるわけではないのだからそれほど神経質になる必要がないのでは」と今は考えているが、今後生成AIを利用しているうちに予想外の弊害が起こる可能性はある。

ここで開き直るわけではないが、画像生成AIに限らずその他の用途でもAIはクリエーターにとって今後の制作にはきっと役に立つはずだ。とりあえずは前向きにとらえ積極的に利用してみてはどうだろうか。

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