Rhino × Grasshopper All in 1 パーフェクトリファレンス Rhino7対応の本文フォーマットデザインとDTPを担当した。その制作工程の紹介を兼ねながら、本文レイアウトデザインについて解説する。
本文レイアウトの前提
2017年出版のRhinoceros 逆引き コマンド・リファレンスと同じ著者による、Rhino × Grasshopper All in 1 パーフェクトの本文レイアウトデザインとDTPの依頼を請けた。今回はカバーや帯などの装丁部分の制作はない。
編集者との打合せ時に、今回作業する書籍と内容が近いリファレンス本である著者の前著(Rhino × Grasshopper All in 1 パーフェクト)を参考として提示された。前著の左ページ小口には、章タイトル、節タイトルを配置。右ページ小口には章のツメが配置してある。この手のリファレンス本は、初めから読むというよりも、必要な情報を探すために、読者は前後のページを行き来する場合が多く、自分がどこにいるのか、また他の章・節をすぐに探し出せるように、それぞれのタイトルや番号を配置することが読者にとって有用である。初めから読むような文芸本の場合は、これらは必要ない。むしろ余計な情報になる。
今回も基本設計は前著と同様に考えた。
レイアウト案制作
余白(マージン)を決める
紙面レイアウトデザインの参考書としては、グリッドシステム / ヨゼフ ミューラー=ブロックマン著という有名な書籍がある。
デザインにおけるレイアウトについての本であるが、書かれているのはほぼエディトリアル(書籍)・デザインに関してである。グリッドシステムの中では、レイアウトに関して天地小口ノドの各アキに関して代表的な2例が掲げられている。図中の数字は比率。
もちろんこのレイアウトが絶対ではない。
今回の書籍の内容を考えると、ページ数が400ページ超と厚い書籍になることが分かっていて、ノド側が狭いと文字が読みにくくなることがあるため、黄金比に基づくフォーマットは避けた。厚い本でノド側の奥まで文字があると、ページを大きく開かないと文字が読みにくいと思った人は多いだろう。
また良いプロポーショナルのマージンのフォーマットは理想的だが、やや地のアキが広い。脚注など本文版面外の文字配置が今回はないので、ここまで広く地のアキを取る必要はない。
これらのことから、この2つの折衷案を考えることにした。
文字の級数と行送りを決める
最近PCやWEB系の書籍では13Qを本文に使うことが多い。
行送りは10.4H。
42文字×38行。
これらから版面の大きさを算出すると、219.7ミリ×136.5ミリとなる。
ちなみに私の場合、書籍フォーマット制作の基本となる文字の大きさの単位はQ(級)、行送りはH(歯)で統一している。理由は以前詳しく書いた。
版面が決まったところで、余白も決まる。
本文レイアウトデザイン案作成
柱(章・節のタイトル部分)やツメなどの要素を配置して、レイアウト案を作成する。
デザイン案-A:
全章同じ色で、見出しのデザイン処理もミニマルにし、図版を目立たせるデザイン案。章や節のタイトルは左ページの地部分に配置。見出し、本文すべてゴシック体。
デザイン案-B:
章ごとに色を決める。節見出し部分は、余白を大きく取り目立たせ、ページを移動する際にも節がすぐに分かるようにする。その他のデザイン要素もデザイン案-Aに比べると目立たせる。見出し、本文すべて明朝体。
以上2案を提示した。その後著者の要望により、デザイン案-Bを基本に本文を小塚明朝に、見出しなどそれ以外はすべてゴシック体に修正した。
各章の色を設定
本文は全7章で、第1章から第3章はRhinoceros、第4章から第6章はGrasshopper、第7章は付録なので、その内容を考慮して各章の色を設定する。
2つのパターンを提示。その後修正を重ねて各章の色が決定。
DTP作業
フォーマットが決まったので、原稿を取り込みDTP作業を進める。
見本誌が届く
制作後記
完成したら450ページほどの分厚い書籍となった。当初の想定通り、完成した見本誌を見ると、のどアキを大きく取ったため、ページを大きく開かなくても文字が読め、また柱とツメにより必要なページにアクセスしやすいリファレンス本になっている。一度読んだら終わりという種類の書籍ではないので、手元に置いていつでも気軽に読むことができるような本に仕上がったと自負している。