デザイン分野ではMacが圧倒的に優勢であるため新人やこれからデザインを始めようとする人たちは選択の余地なく高額のローンを組み無理してMacを購入する人がいる。しかしここで疑問が湧く「デザイン制作はWindowsじゃだめなの?」先に答えを言うと
〈 Windowsでも問題なし 〉
以下その説明をする。
Macでないとデザイン制作ができない時代ではない
ここまで書いておいて何だが言いたいことは以前ほぼ下記記事に書いてしまった。
SNSで蔓延するどちらかのOS(現実的にはMacOS)に偏り「どちらかのOSでないとダメ」という極端な意見をよく見るが参考しないほうがいい。しかし初心者はそんないい加減な投稿を読んでしまうと迷ってしまう。プロフェッショナルなら自分の好みは置いておいて正しい情報を発信しなければダメでしょ。
追記:このブログ公開後早速個別のフォントの件で突っ込んで来たデザイナーがいた。些細なことで「だからWindowsでデザインはできない」にはならない全く本質から離れた意見であった。このような突っ込みに対し経験が薄いデザイナーなら反論もできずマウントをとられて終わりだろう。しかし私のように経験も実績もあるデザイナーが正しいことを言う事こそ必要だとあらためて感じた。
SNSで見たいくつかのデマ
まず断っておくが私はデザイン初心者にWindowsを勧めるわけではない。かと言ってMacを勧めるわけでもない。WindowsとMacどちらのOSでも業務上問題はないと言っているのだ。極めて中立的な立場である。「Windowsでチラシをデザインして印刷したら色がおかしかった」「Macを使っているデザイナーにWindowsで制作したデータを送ったらデータが崩れた」などということはないと断言する。あったとしたらそれはOS間の問題ではなくデザイナーの知識不足やスキル不足の問題だ。
その上でこの記事を書こうと思った動機はSNSで確証もないデマを喧伝するアカウントがいくつか見られたからだ。もちろん多くは「業務上Macでないとトラブルが起こる」というような、根拠も検証もなくあまりにバカバカしく一笑に付して無視すればよい話ばかりだ。しかしこれからデザインを学ぼうとしている人や仕事に就こうとしている初心者は不安であり何が真実かわからない。すでに適当なWindowsマシンを所有していても周りのデザイナーに勧められるまま高額なMacをローンを組んで購入してしまう。またはMacを購入する金がないからデザイン業自体をあきらめてしまう。そういう人がいなくなって欲しいと思ったのが切っ掛けだ。
では具体的に最近SNSで見たデマを挙げてみる。ちなみにすべてMacでないとダメ、または業務に支障が出るというデマである。ここでは業界標準であるIllustrator、PhotoshopやInDesignを使用することを前提としていて深く使ったことのないCanvaに関しては触れない。もちろんCanvaの是非を言っているのではない(あ~面倒くさ)。
Mac制作のデータをWindowsで開くとデザインが崩れる
ウソ。現在では完全互換が保たれている。Windows制作のデータをMacで開いても崩れることはなく問題はない。
フォントの問題があるのでMacにしておいた方が安心
ウソ。現在主流のOpen Typeフォントを使う限り問題はない。これもMacとWindows間で互換が保たれている。例えばMacで作ったIllustratorデータをフォントのアウトラインをとらずにWindowsで開いても問題ない。ただしこの場合両OS間で同じフォントをインストールしていることが前提。
上の「デザインが崩れる」とこの「フォント」の件を投稿したデザイナーにどこが問題なのか直接聴いてみた。もしこれが真実であるならば私が行っているWindows DTPを止めなければならないからだ。それほど重大な問題である。応えは「『フォント』に関しては素人がWindowsで作ったPTAの会報をMacで開いたら問題(文字化けか?)が起きた」とのこと。素人が適当なフォントを使って作ったドキュメントを開いたらMac-Mac間、Windows-Windows間でも文字化けは起こる。このデザイナー自身知識がないことを自覚せずにあまりにいい加減な投稿をしていることに呆れてしまった。
MacとWindowsでは色が違う。Macでないと使えない
ウソ。これを発信しているデザイナーはプロダクトデザイン関連であり私には縁がない世界だ。Macでないと業務契約をしない会社もあるとのことだ。しかしいずれにせよモニターに表示される色と出来上がるプロダクトの色には差が出て当たり前。デザイナーの多くはそれを承知の上で仕事をしている。もちろんなるべくその差が埋まるように関係者間で使用するモニターはハードウェア・キャリブレーションなどを用いて厳密に調整・管理するに限る。一部の色管理が厳密な制作物の場合はそうかもしれないが、多くはモニターのソフトウェア・キャリブレーションを行い、適当なカラープロファイルを使用してデザイン制作を行っている。そして必要であれば印刷物の場合色校正で確認して、使用する用紙にも色が影響する場合は本紙校正を行う。いくら厳密にモニターを調整しても印刷したものとは異なるのだ。そしてMacとWindows間で業務に影響が出るほど色が違うということは2024年ではありえない。大昔は顕著な違いがあったらしいがそんな昔話をしても意味がない。
周りの環境や資金で選べばよい
ここまでデザイン制作をする場合はWindowsでもMacでも差がないことを説明してきた。それ以外には個人的な資金や周りの環境で選べばよい。異なるOS間でファイルを交換するとファイル名が化けるなどということは些細な問題でしかない。そしてOS自体の使い勝手も両OSを使う私からすれば変わらない。「Macをずっと使ってきたが会社都合でWindowsになった」としてもすぐに慣れる。もし「Macでないとデザイン制作はできない」といろいろな理由を付けてくるデザイナーがいても無視でいいでしょ。