デザイナーはWindowsではなくMacでないとダメなのか

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制作環境のイメージ

かつてMac(Macintosh)かWindowsかを巡り、血で血を洗う争いが各地で繰り広げられていた。2023年の現在では信じられない闇の歴史である。しかし今でもデザイナーと言えばMacという印象が一般の人でも多いのではないだろうか。
これからデザイナーになろうとしている人は、どちらのOSを使えば良いのだろうか。デザイン制作を行う上で、MacとWindowsの間に差はあるのだろうか。チラシ、パッケージ、書籍など紙媒体のアナログ系デザインと、WEBやアプリのデジタル系デザインの両分野を現役で行っている私が説明する。

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デザイナーはMacとWindows、どちらを使用するべきなのか

結論を言うと、
どちらでも良い

好きな方を使えば良いのである。
「Macのほうが使いやすい」「Windowsのほうが使いやすい」ということはない。どちらも使い勝手は同じ。いずれかいつもとは異なるOSを使う場合、はじめは戸惑うかもしれないが大きな差はないのですぐに慣れる。
私の関わった現場のOS環境は、印刷が関係するアナログ系のデザイン現場では完全にMac環境。
WEBやアプリなどデジタル系現場の場合は分かれていて、デザイン専門の事務所などは多くがMac、アプリなどの制作現場はほぼWindows(iOSアプリ制作の場合は当然Mac)。デジタル系の現場ではいまだデザイナーはエンジニアに比べるとマイナーな存在であり、ほとんどWindows環境と思って良い。
このように扱うデザインの種類によってMacとWindowsがはっきり分かれている。何故なのだろうか。DTPでWindowsを使ってはダメなのだろうか。逆にWEBアプリのUIデザインにMacを使うと不利益を被るのだろうか。これにはDTPの歴史が大きく関わっている。

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当初デザイン・ツールとしてはMacしか選択肢がなかった

インターネットが広まる前からパソコンでデザインはできた。それが実際の業務に使えるレベルだったのか否かは別として。実際のデザイン制作業務に使えるツールとしては、安価で構築が簡単なDTP(Desk Top Publishing)工程が確立してからだろう。Macの画面上で作られたデザインデータを印刷所に入稿して、デザイナーが意図した通りの印刷物が完成する。今では当たり前の工程だ。しかし以前はチラシをデザインして印刷するには、現在でもメインのアプリケーションであるAdobeのIllustratorを使っていたのだが、当時日本語のWindows版は存在せずMac版しかなかった。印刷物をデザインするプロに選択肢はなくMacを使う意外に方法はなかった。
日本語のWindows版Illustratorが初めて登場したのはヴァージョン4.0から。これでWindowsもプロのデザインツールとして使用できたかというとまだ道は遠かった。当初Windows版は、プリンタドライバーによって、フォントの種類や文字詰め情報が異なるという、全くプロのツールとしては使えないものだった。いわゆるPostScript非対応。要するに使うプリンターによって仕上がりが異なっているという今では考えられない仕様である。ただしMac版とWindows版の間でドキュメントのやり取りは出来た。AIファイルとAIファイル、PSDファイルとPSDファイルなど。今では当然と言えば当然なのだが当時は感動したものである。

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OpenTypeフォントの普及

フォントのアウトラインを取れば、または画像化すればフォントの問題は解決する。初代DTP三種の神器、Illustrator、Photoshop、QuarkXPressのうちIllustrator、Photoshopはそうして、フォント問題を回避できたが、QuarkXPressだけはアウトラインを取ることができずMacを使わざるを得なかった。アウトラインを取らない場合は印刷所が持っているフォントしか使えない。だから作業前に印刷所が所有しているフォントリストを取り寄せたりしていた。
フォントの問題は少し複雑な話になるのだが、簡単に言えば、昔はMacとWindowsの間にフォント互換性がなかった。TrueTypeがあったではないかと突っ込まれそうだが、当時DTPでTrueTypeフォントは、アウトラインを取らない状態での使用を推奨されていなかった。

しかし時が経ちOpenTypeフォントというMacとWindowsの間で、完全互換があるフォントが実用的になる。AdobeもQuarkXPressに対抗するInDesignを発売し、一気に利用が広がり組版のアプリではInDesignが圧倒的なシェアを取り今に至る。
この両方の利用拡大により、DTP業界はMacとWindowsの完全互換が取れるようになった。

Windows DTP

Windowsのイメージ

当時、私もDTPによるデザインのみだったので使用機器も全てMacだったが、今よりも作業環境の進化が速く、機器も数年に一度買い換えないとならない状態であった。しかしMacや周辺機器は高価。20万円、30万円する21インチのブラウン管モニターを使用するために、10万円のグラフィックカードを使わないと映らないような世界。ゲームをやるわけでもないのに。

そこで私はより安価にシステムを構築出来る、Windows DTPに挑戦してみようと考えたのである。しかも安くするには自作が良いと。もし失敗しても一応現役のMacがあるので心配はない。
結果、WindowsでDTP環境を作り、デザイン制作をし、納品したが全く問題はなかった。当時PDFによる入稿はほとんど行われていないため、フォントのアウトラインを取り、リンク・ファイルを添付したAIファイル、PSDファイル、そしてアウトラインを取らないままのInDesingのINDDファイルを扱った。もちろんOpenTypeフォントを使用した。
ただ意識の低い雑誌編集者に、まだ極少数だったWindows版InDesignで制作したと伝えると、拒否された事が何回もある。こちらは今まで不都合は無いことを伝えても受け入れてもらえなかった。

それから20数年間の私のDTP環境はWindowsでまったく問題はない。

何故、デザイナーはMac派が多いのか

プロデザイナーの環境は、上述の様にMacしか選択肢のないDTPから始まった。その流れで今でもDTPの現場は完全にMac。エディトリアルでも、チラシ制作でも、ポスター制作でも、SPツール制作でも、パッケージ・デザインでも。今まで私の他にWindowsでDTPを行っているプロのデザイナーには会ったことがない。そしてこの「デザイナーはMac」というDTP/アナログデザイン業界標準の空気が、Appleのブランディングも後押しし、デジタル系のデザイナーにも受け継がれているのである。これは日本だけではなく世界的な傾向だろう。

2023年 デザイナーのOSは? Win? or Mac?

私自身、現在はデジタル系案件の方が多いが、アナログ系もそこそこある。特に2020年後半からは。
デジタル/アナログ構わず、様々な種類の案件をこなしている現役のデザイナーの感覚で言えば、現状は以下のようになっている。私の関わった案件の範囲内での話である。

WEB、アプリなどのデジタル系デザイン現場の場合

Web、スマートフォンなどデジタル系の現場はどうだろうか(ゲーム業界は分からないので除く)。
特にデジタル系はエンジニア(プログラマー)と分業で作業をする事が多く、エンジニアはほぼWindows。そうなると必然的にその上流工程にいるデザイナーもWindowsが望ましい。もちろんMacでも拒否される事はないだろう。
アプリのUIデザインを制作したり、プロトタイプを作ったりするデザイナーは、以前プロトタイプツールと言えばMac版のみのSketchで制作していたものだが、現在はWindows版もあるFigmaが主流なのでOSは関係ない。私もWindowsでFigmaを使用しアプリのUIデザインやWEBデザインを制作して納品している。
デザイン制作をする際にMacでもWindowsでもデザインの質やアプリの扱いに差異はない。どちらを使っても問題ないが、エンジニアと協業するのならWindowsの方が歓迎されるだろう。

エンジニアと同じ開発環境構築にはWindowsが有利

エンジニアと作業する場合にもう一つ注意。純粋にデザイン制作だけの場合はMacでもWindowsでもほとんど関係ない。しかし多くの場合HTMLやCSSなどのコーディングがデザイナーにも必要となる。その場合デザイナーは開発エンジニアと同じ開発環境を構築する必要がある。そしてこれがエンジニアによって様々。この開発環境に使われるソフトウェアがWindows版のみということが多くあった。私は元々Windowsなので何ら問題なく指示通りの環境を構築できたが、これがMacだったら作業に問題ない同じような開発環境を構築できたかは疑問。構築できたとしてもちょっと面倒なことになっていたかもしれない。

アナログ系現場の場合

アナログ系の現場はどうだろうか。MacでもWindowsでも現在はフォントの問題が以前よりもさらに改善され、気にしなくても良いレベルだろう。印刷入稿も今はどの印刷所でもMacとWindowsに完全互換のあるPDF入稿が原則なので問題は全くない。後は周りのDTPデザイナーが皆Mac環境の中でWindowsを使い続ける勇気があるかどうかそういうレベルの話である。

私の制作環境

自作デスクトップPCによる完全なWindows環境である。アナログデザインもデジタルデザインも。
ちなみにUIをデザインする際にSketchは使用しない。使ったことがない。今までSketchでの制作指定はあったが、FigmaかXDでも可能だった。年々Sketch限定での制作は減っている。
しかしラップトップPCはMacも所有している。Macのデザイナーからデザインデータをもらうと時々Macでしか使えないType 1フォントを使用していて、フォントが添付されていてもWindows版のアプリでは使えないからだ。しかし今ではType 1フォントを使用しているデザイナーはもうほとんどいない。
MacでもWindowsでもデジタル系のデザイナーにはいないのだが、アナログ系デザイナーではフォルダ名やファイル名に日本語2バイト文字を使うことがあるので注意。

まとめ

Macは今でもWindowsに比べると割高だ。もしあなたがこれからデザイナーを目指していて、金銭的な余裕がないのなら迷わず割安なWindowsを購入する事を勧める。ゲームをやるので無い限りそれほどハイスペックのPCは必要ない。使い勝手も悪くない。
もしデザイン納品データはMacでないとダメだと勘違いしている人がいたら、この記事を読んでWindowsでも問題ない事が分かれば幸いである。

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