新しく開塾した学習塾とプログラミング教室のチラシデザイン制作を請けた。
今回は1週間弱でデザイン制作と、印刷物を複数の場所に納品するという非常に厳しいスケジュールを遂行した。
デザイン制作に掛けることのできる時間は実質4日間。この間に発注者と最低三校はやりとりをしなければならない。よって通常の制作工程とは異なる体制で挑んだ。
デザイン条件
打ち合わせ時にデザインの条件をヒアリングする。
- A4判
- 4C / 4C (両面カラー印刷)
- 印刷枚数は10,000枚
- そのうち8割は新聞折り込み
- 1週間後に印刷物を複数の新聞販売店に必着
- 必要な画像やテキストは発注者から提供
スペック的な部分は以上で、この塾の特徴は発達障がいの専門職員がいるため対応可能かつ学習塾とプログラミング教室が併設されていることである。この2つを競合他社との差別化要素として目立つように扱う。
ヒアリング中、WEBサイトや発注者が集めていた競合他社のチラシを見ながら方向性を探った。
初校ラフデザイン━━デザイン方針とは
原稿と画像素材をもらい、実質1日でラフデザインを制作。初校デザインを提出して、文字校正とデザインの方向性を確認してもらう。
全体的な色味としては明るく丸い感じが希望とのこと。囲みには角丸を使い、見出しに使うフォントは丸ゴシック系、文字は大きめにする。
一般的にチラシ・デザインをする上で、デザインの方向性は2つ考えられる。
- サービス、業種にありがちなデザインを採用する
- あえて同業では使われないデザインを採用する
今回は1の方向性で進める。
学習塾生募集のありがちなデザインとは何か。WEBで画像検索してみれば分かるが、学習塾チラシの色は紺色をキーカラーとして白色または黄色を使っている。紺色は堅実、真面目を象徴する色なので使われていることが多い。紺色と白色が使われていれば、誰でもチラシをパッと見ただけで何となく学習塾や学校などを想起するはずだ。ありがちなデザインを採用するということは、文字を読まなくても手に取った者に何となくの印象を想起させるのに効果的である。
逆に2の方向性は、紺色ばかりのチラシの中で例えば、赤色の学習塾チラシがあれば目立つが、パッと見ただけで学習塾とは思わない。画像やキャッチコピーで手に取った者の興味をひく必要があり、デザインとしてはやや高度である。
今回は学習塾を想起させる紺色よりは、明るく柔らかい青色(C100%)をキーカラーに採用した。
学習塾チラシ制作の定石
競合他塾のチラシを見ると、表面も裏面も文字で埋めつくされているものが多い。文字のジャンプ率(大小の差)が低く、結局何が言いたいのか分からない。
基本的に自分から望んでチラシをもらう人は別として、いきなりチラシを渡されても人は文字を読まない。目に入るのはヘッダーにある大きな画像と、大きなキャッチコピーだけだと思ったほうがいい。逆に塾経営者としては、知ってもらいたいことが多く熱い思いも伝えたいため文字数が多くなりがちだが、多量の文字で埋めつくされたチラシなど読みたくないだろう。
一応ターゲットを絞っても不特定多数に配布するチラシは、詳しく説明が掲載されているWEBサイトへの導線と考えたほうがよい。
そしてテレビCMを大量に打つような有名塾であれば塾名で集客できるが、一般的には塾名を大きく載せたところでその塾に通いたいとは思わない。塾名を聴いても知らないからだ。そのような理由からヘッダーに塾名を大きく載せるのは止めて、フッター部分に住所や電話番号、WEBサイトのURL、メールアドレスと共に控えめに載せるのが妥当だろう。これはWEBデザインでも同じことだ。
制作時間が短いので表面のヘッダーに配置するメインとなる画像は、後日撮影して送ってもらうことにした。地図作成も時間がかかるため後から作成することにする。全体の雰囲気は発注者にも分かるので細かい部分は後から詰める。
裏面の男女二人の画像は、元は一枚の絵を支給されたものでそこから切り抜いた。これも精密な切り抜きには時間がかかるためラフに切り抜いたものをとりあえず配置した。
再校デザイン
翌日修正・変更点をもらい再校デザインを作成。
ヘッダーに使う画像として指導中の画像と、看板に使用したイラストの画像データを提供してもらった。当初、指導中の画像でいこうと思ったが、塾名とイラストの雰囲気が合っているので、ヘッダ部分の画像を替えた2案を提出した。結果イラスト案が採用された。
裏面は文章の修正とデザインの詰めを行う。イラストを正確に切り抜き配置した。
いつも通り、修正するたびにプリントアウトしたものを壁に張り出し、眺め検討する。画面を通して見ているだけでは気が付かない点がいくつも浮かび上がる。
三校デザイン
地図も完成し、細かい部分のデザイン処理を行う。指導中風景はボツになったが、イラストのみであると、本当に開塾しているのか現実感がない。ちょうど左下部分が空いているのでここに小さく指導中の画像を配置することにした。裏面もレイアウトの調整をして完成。
ここで表面の「新学期生徒募集」のキャッチコピーが一部背景の色と重なり見にくいと感じ、キャッチ文字をフチ文字ではなく、1文字ずつ透過した白い四角型を背景に敷く案を作り提出した。これは学習塾のキャッチコピー付近の処理に、よく使われるデザイン処理である。
結果としては、フチ文字の案が採用された。
そしてどうにかスケジュール通りデザインは完成。印刷所へデータ入稿して、印刷物の配達先を指定してすべて完了。
かなりの急ぎ作業であったので、途中ミスがないように細心の注意を払った。
完成そして印刷サンプル到着
入校時のデータチェックで一部オーバープリントの部分がありデータ修正したが、サンプルを見る限り他の部分にミスはない。サンプルが届き確認する瞬間はいつでも緊張する。
今回、作業を初めたのが火曜日。そして印刷物を指定先に納品したのが日曜日。実質6日で納品するのは今回が初めての経験だった。時間が無いからと、ろくに校正をせず、デザインも適当にやるわけにはいかない。それはプロのデザイナーとしての矜持だと思っている。
今回ご依頼いただいたのは、東京都・練馬駅にある学習塾/プログラミング教室 ひまわりプラス。
WEBサイトは制作中とのことで、問い合わせは電話 03-6904-2680 までどうぞ。