【制作実績】の新規紹介。
Microsoft社のPower Appsを利用した、今話題沸騰中の「ローコード、ノーコード」での業務アプリ開発入門書の装丁を担当した。昨年辺りから、非プログラマーの人が、業務用アプリの開発が出来る「ローコード、ノーコード」がニュースでも採り上げられる機会が多くなったが、まだ類書は少ないのが現状。
見本誌が到着
まずは、届いた見本誌を見ながら、印刷状態とデザインをチェック。
特色版は、もちろんカラーチップを見て指定しているわけだが、色が想定した通りに出ているか、文字との調和が取れているか、軽視される部分だが、実は気になる。
私が担当したのは、装丁一式なのでここまで。
制作工程:1 アイデア出し、サムネール
今回特に出版社や著者から、デザインの指定はなかった。入門書なので、専門書ではあるが、入門者が手に取りやすいように、なるべく柔らかく、気軽な感じを出そうと考えた。そしてPower AppsやPower FXについて調べる。
その上で、まだあまりないが、類書を参考にしながら、サムネールを描いてゆく。
思いつくアイデアをとにかくどんどん描いてゆく。サムネールだけでなく、アイデアは文字としても起こしてゆく。
この段階では編集者には見せていない。
制作工程:2 ラフデザイン(線画)
今回、サムネールからラフデザインを起こすにあたり、色を付けずになるべくラフな状態で、編集者と著者にデザイン案を提出してみた。WEBデザインで言えば、ワイヤーフレームの状態だ。
「ローコード、ノーコード」と対義的な「プログラミング言語」を並べ、陳腐化している状態。気楽な入門イメージを出すためのポップな文字組み。「ローコード、ノーコード開発」のイメージとして、モジュラー化されたブロックをつねげてゆくイメージ。タグに描かれたアイコンをメインに、割と入門書にありがちなイメージ。3案を提出した。
「なるべくラフに作った」と言っても、少し手を入れ過ぎた感はある。しかし返答は「色が付いていないと判断が」つかないとのこと。やはりそうなのか。その中でも3案のうち2案を選んでもらったので、これを元に色付けしたラフデザイン案を制作する。
制作工程:3 ラフデザイン(色付き)
選出された2案に色を付ける他に、その2案のバリエーションを作ってみた。
2案に対して、それぞれさらに2案を作る。
色を付けるにあたり、Power Appのキーカラーである紫(#742774)を全案に入れた。
私としては、時間を掛け、気に入っているポップなイメージの案が選出されると思っていたが、意外にも「普通」な案が選出された。この本のターゲットとして、ビジネスマンを対象としているため、ビジネス書としての面を出したいとの理由から。線画状態からは、大きく文字組みを替えたが、これが選ばれた。
ほとんど完成状態だが、これをさらにブラッシュアップして詰めてゆく。
制作工程:4 大扉制作
ここで引き続き作業して、カバーを完成しようと思っていたが、ちょうどゴールデンウィークが重なり、カバーよりも大扉を先に完成させる必要があった。カバーと本体の印刷は別で、製本などの工程もあるため、通常は本体の印刷が先になる。
左がノドにあたるため、今回デザイン自体はそのままで、タイトル部分のレイアウトを変更した。中心か右に寄せるかだが、動きを感じさせない、安定した印象を与える中心を選ぶ。
制作工程:5 カバー制作
選ばれたデザイン案を元に、カバーデザイン案を完成させる。
表1のイメージにある「タグ」画像を加工し、束部分の文字を組み、表4には新たな別の「タグイメージ」を制作し配置。表1で「タグイメージ」案が採用されたので、他の部分にも様々な「タグイメージ」を制作し、配置してゆくことにした。これはデザイナーの遊びで、深い意味はない。
制作工程:6 オビ制作
カバーが完成したので、カバーのドキュメント上にオビ制作用の新規レイヤーを作り、オビを制作する。カバーとレイアウトの具合を見ながら調整するためだ。
オビをかぶせると、カバーは紫とスミと地色の白の3色。地味である。ビジネス書としてのカバーデザインとしては問題ない。しかしオビというのは、販促物であるため、キャッチコピーが入り、書店で手にとった人の目に入らないといけない。ある意味、オビは広告であるからだ。
そこで目立つように、オビの地色としてオレンジ気味の黄色を選んだ。ここに文字色として、紫を載せれば補色に近いので、少し目が痛い位に目立つ。ちなみに本来の紫の補色は、黄緑色または黄色。
キャッチコピーの中でも「ローコード、ノーコード」を目立つように、下線を敷いた。
また、これだけだとカバーも含め文字ばかりで、書店で目に入っても読む気にならないし、硬すぎる印象があるので、タグイメージを変形させ配置した。
オビの束部分はカバーに合わせる。
オビ表4には、本の内容が入る。実際本にオビを掛けた状態で表4を見るとここも文字だらけ。つまらないので「Chapter」文字部分の時に色を敷き、さらに単なる羅列を避けるため、右下斜めに向かい文字を配置した。そうすると左に空白が出来るため、ここにも新たな別のタグイメージを制作し配置した。
上図のようにオビを広げてみると、表1と表4に配置されたオビのタグイメージが、外側に向いていてバランスも良い。
制作工程:7 本体表紙制作
装丁作業最後の工程である、本体表紙の制作である。
カバーデザインを流用して、そのまま1色化するだけでも良いのだが、少し変化を与えようとして、本体大扉と同じにタイトルを水平方向中心に配置した。
タグイメージは入れなくても良かったが、タグのひとつを手書き風線画に加工して遊んでみた。
束部分のレイアウトはタイトルが長いせいもあり、それほど組み方にバリエーションを作る事ができないためそのままにした。
表4は再びタグイメージを入れることも考えたが、しつこいので何も入れない。
色はPower Appsのキーからである紫を全面に敷いたのだが、本来の紫(#742774)は、少し暗いので、明るい紫の特色(DIC186)を選んだ。
完成
これからPower Appsで業務アプリを開発してみようと思っている人は、類書も少ないので是非本書を手にとってみて、学んでみてはどうだろうか。