【Office Scriptによる Excel on the web 開発入門】の装丁を担当した。
その実績紹介とデザインの発想から印刷入稿までの過程を解説する。
デザインの前提条件
Excelと言っても、今までのPCにインストールして利用するOfficeではなく、ブラウザーを通して利用するWEB版Excelに、Office Scriptを使い開発をする解説書。WEB版Excelの類書はなく、Office Scriptの類書もないので、貴重な解説書であろう。Windows 10をインストールすると、スタートメニューにOfficeのアイコンがある。それをクリックするとOfficeのウィンドウが表示され、その中にExcel、Word、PowerPointのいつものアイコンがある。これがWEB版のOfficeだ。もちろん今まで通りPCにインストールすることもできる。WEB版には制限があるが無料で利用できる。
内容は半ばシリーズ化している、ビジネスで使うことを前提とするやや中級者向けの書籍。
過去に以下のような書籍の装丁を担当した。
デザイン方針としては、上記2冊の制作経験から初級者から中級者レベルのビジネス利用を想定した。柔らか過ぎず、堅過ぎず、派手なデザインは今回必要ない。
サムネイル制作
いつも通り、まずはサムネイルを制作する。手描きで思いついたアイデアをどんどん描いてゆく。類書や最近流行りの装丁も調査し意識しながら描く。
ラフデザイン制作
文字のレイアウトを主として、サムネイルで出したアイデアをラフデザイン案で具現化してゆく。今回は4案作り提出した。Microsoft OfficeとExcelのアイコンをモチーフにして何点か作る。ラフデザイン案なので完成度は60%ほど。以前一度、完成度30%位の線画の状態で提出したのだが、イメージが全くつかめないとの指摘があり、もう少し具体化したラフデザインを提出するようにした。
紙のデザインの場合は、必ず紙に原寸で出力し壁に貼り眺め検討する。作業の間に他の仕事をしながら時々眺め、時間を掛けアイデアをさらに膨らませてゆく。このようにすると時々PCを前にしている時には思いつかなかった修正点や改善点に気付くことがある。
デザイン制作
前図一番左のラフデザイン案を元に、Excelを強調するよう指示があり、さらに2案を制作。共に保守的なデザインの中で、柔らかいデザインと堅いデザインを作った。これでほぼ100%の完成デザイン。
提出した結果右のデザイン案に決定した。
大扉制作
いつもの行程通りデザインが決まったら、まずは印刷入稿順に大扉を作る。本文組版に含まれる部分であるため、印刷はカバー、本体表紙より先に印刷行程に入る。
書名部分を縮小しセンターに寄せた。その下に薄くExcelのアイコンを線画にして、回転・傾斜をつけ配置する。
本体表紙制作
大扉の次は、書籍本体の表紙を制作する。これもいつも通り特色1色で作る。事前に知らされた本体そしてカバーとオビの束幅を確認しながら慎重に作業する。今まで多くの装丁を行ってきて間違えたことはないが、「もし束幅を間違えたら」と思うと緊張する作業である。
大扉と同様に書名をセンターに寄せ、その下に薄くExcelのアイコンの線画を配置。ただしこちらは、カバーを外して見た人を少し驚かせようと、線画をラフな感じにした。これはいつもやる軽い遊び。
これは印刷入稿データで、実際の刷色はDIC178を指定。
カバーとオビの制作
束幅に注意しながら、カバーとオビの印刷入稿用データを作る。オビはもう1案作ったのだがこちらのデザイン案が採用された。カバーでの書名が太目のゴシックであるのに対し、対角線上に明朝/セリフ系の細い書体でキャッチコピーを書名と同様ブロックにして配置した。オビの地色は、書名のExcelに使用した同じ緑(C90+Y100)を指定。
以上で印刷入稿用のデータは全て完成。全てIllustratorで制作したので、フォントのアウトラインを取ってから、ドキュメント情報のパネルを開き、フォントのアウトライン漏れがないか、CMYK以外の色が使われていないか、配置した画像のリンク切れや不都合はないか入念にチェックしてから、印刷用に高解像度PDFに変換して編集者に送信。
問題なく終了。後日見本誌が届くのを待つ。
見本誌が届く
毎回、封を解き実物を見る瞬間は緊張する。思い通りのデザインや色になっているだろうか。編集者も気が付かなかった間違いはないだろうか。
とりあえず問題はないようで安心した。
本体表紙はもう少し緑が強くても良かったと反省。
言い忘れたが、カバーはマットPP加工を指定した。この手のコンピューター関連書籍は、使用しているとスレが目立つグロスPPよりも、スレが目立たず落ち着いた雰囲気のマットPP加工が適切である。