厚生労働省の国立博物館である、昭和館*からコンクール告知チラシの制作依頼をいただいた。代理店を通すなどの下請けではなく直請けなので、意思疎通を取りやすい。
東京メトロ九段下駅を降り、武道館に向かう途中にある博物館である。戦中・戦後の国民生活に関する資料や情報の展示を行っている。
（*人名ではないので「さん」「様」などの敬称は省略。）
打ち合わせ
制作するのは、昭和館を見学した小・中学生の作文コンクールの告知チラシである。対象は小・中学生とその教師。主に小・中学校に配布する。レトロ調とパステル色のポップ調のデザイン2案を提出するよう要望があった。
スタイリッシュや格調高いデザインとは対照的な、分かりやすく明快なデザインが求められる。
仕上がりは、A4判コート紙で4C/1Cである。
サムネイル
要望のあったレトロ調とポップ調2種のデザインを念頭に置き、思いついたアイデアをどんどん描いてゆく。
ラフデザイン
サムネイルを参考にしながら、提出するラフデザインを制作する。
ラフデザインなので、デザインの方向性を探る意味でやや極端に制作した。しかし少し作りすぎた。
戦中・戦後のチラシやポスターの特徴として、地色がシアン・ベタ（100%）で文字がキンアカ（Y100%+M100%）のようなコントラストが強く、目が痛くなるような補色関係を使ったものが多い。またメインタイトルやキャッチコピーには極太の明朝体に、これまた極端な長体や平体を施した文字を使っている。淡い色関係のパステル調は少ない。レトロ調のデザインはこの調子で作った。
レトロ調とは正反対に、パステル調のデザイン案は子供向けで優しいイメージで、タイトルは丸ゴシック、カコミ罫も角丸を使い、画像は子供が夢想しているイメージを模し雲形でマスキングした。全体の色調はもちろん水色、桃色、橙色、黄色などパステルカラーを使う。
要望されたデザイン案とは離れた第3案として、シンプルで告知メインのデザイン案を制作した。支給された公式キャラクターのイラストをちりばめ、固くなりすぎないようにした。
裏面は説明文がメインなので、両案共に表面のイメージを踏襲しつつ、小・中学生に読みやすくレイアウトした。
いつも通り、プリントアウトしたデザイン案を壁に貼る。そして提出。
ラフデザイン修正
追加の第3案は外された。レトロ案とパステル案は私の考えていたイメージと135度くらい違い、衝撃を受けたようで作り直し。またサムネイルに戻り思いつく限り描いてゆく。再度より詳細に要望を聴くと、ベタに昭和感を出し過ぎたのかもしれないと思った。初回打ち合わせの帰りに、館内展示物を2時間ほどかけてゆっくりと観て回った。それは今回の仕事とは別に第二次世界大戦に興味があるからだった。戦中戦後のチラシやポスターが多く展示されており、それに大きく感化されたというのもある。
「レトロ感」を館内展示物から戦中戦後のものに限定してとらえていたが、根本的にそれが間違えていた。打ち合わせ時に、何点か希望のイメージ画像をもらったのだが、もう一度よく見ると大正、昭和初期のレトロ感だ。時代がずれていたのかもしれない。そしてどちらかと言うと、和よりも欧米。そんなことを考えながら、レトロ調をさらに2点、パステル調を2点、裏面のデザインは決定していたので、文字修正を行い1点。以上を再度提出した。
デザイン決定
レトロ調の1案で決定し、それを文字修正、デザイン修正、デザイン追加を加えブラッシュアップし、さらに何度かやり取りをして完成。裏面のデザイン・テイストも完成した表面に合わせる。裏面は特に小中学生が応募する際に、個人情報を記入する欄が小さく書きにくい場合が多いので、できる限り記入欄を大きくした。
完成 サンプルが届く
何度やっても印刷物が実際に届くまでは不安がつきまとう。もちろん入校時には何度もデータのチェックをするのだが。そしてサンプルが届き早速チェックしたが、問題はなく一安心。お疲れ様でした。
まとめ
失礼ながら昭和館の存在を知らなかった。しかし九段下から武道館へ続く靖国通り沿いなので、館前は何度も通っているはずなのだが……。展示物を拝見して、今回の仕事とは関係なくとても興味を持った。第二次世界大戦自体の関連物というよりは、当時の一般国民生活に重点を置いた展示物である。
今回制作したチラシは、昭和館のWEBサイトで閲覧とダウンロードが出来るので興味がある人は是非。
