書籍「AWS Amplify Studioではじめるフロントエンド+バックエンド統合開発」の装丁を担当した。その制作実績の紹介、そして制作過程とその方法を解説する。
制作条件
制作するのは以下
・カバー
・オビ
・本体表紙
・大トビラ
制作条件は以下
・サイズ:182×230mm
・色数 カバー、オビ:4C、本体表紙:特色1C、本文大扉:スミ1C
・束幅 カバーとオビ:22.3mm、本体:21.8mm
企画書をもらい読み込む。
サムネイル
AWS Amplify Studio を知らなかったので調べてみる。
簡単に言えば、WEBやモバイル・アプリの開発環境プラットフォームで、今までのバックエンド開発をフロントエンド開発者まで容易に扱えるようになる。デザイナーには一見関係ないように思えるが、Figmaで作ったデザインをそのままAWS Amplify Studioに取り込むことが出来る。当然AWS Amplify Studioをアプリ制作に利用するエンジニアは、デザイナーにFigmaを指定するだろう。
ちなみに本書ではFigmaに1章分(約50ページ)を割き、導入から使用方法までを解説している。この部分は非エンジニアのデザイナーも参考になるだろう。
AWS Amplify Studioを使用するにあたりNode.js、React、GitHubとの連携。またAWSのDynamicDB、S3を利用する。
以上を念頭にサムネイルを描いてゆく。
ある程度のスキルがあるエンジニア向けなので、柔らかいイメージは出さない。
ラフ・デザイン
タイポグラフィー中心のやや硬めのデザインで4案制作した。紙に出力して壁に貼る。他の作業の合間に目に入り、改善案が思い浮かぶ度にメモして、後から試してみる。それを何度も繰り返す。
普段はオビがカバーに被ることを念頭にカバーのデザインをする。ただし今回一案は、オビのキャッチが入る印象が浮かばないデザインなので、その一案だけオビを被せた案も入れた。
AmazonなどのECサイト上で表示される小さな書影を意識して、書名は出来るだけ大きく可読性を考慮する。特にビジネス書やIT系書籍はこれを強く意識しなければならない。ECサイトに掲載される書影は、基本的にオビなしのカバーだけなのだが、ビジネス書、IT系書籍に関してはオビを付けた状態の書影が最近多い。キャッチコピーも読ませたいからだと思われる。
カバー・デザイン
カバー・デザインが決定。カバーぜんたいに書名をセンター揃えで配置したものが選ばれた。フォントの周りには、関連のフレームワークやサービスのアイコンをランダムに配置した。
アイコンをトレースしただけだと詰まらないので、何箇所かパスを切断して「今」っぽく加工した。カバー表4は何もなくても良いのだが、表1の書名フォントを袋文字にして配置。ひつこくなるので表4にはアイコンは配置せず。
ちなみに袋文字を作るときは、ただフォントのアウトラインに色を付けるのではなく、アピアランスなどを上手く使い、フチが付いたフォントの上に、フチ無しフォントを乗せる。フチの外側に色を付けるようにしても良いが、それだと印象が悪くなるので注意。
オビ・デザイン
ラフ・デザインに調整をし完成。ちなみにカバーの紺色とオビの橙色は、Amazonのコーポレート・カラーを意識したもの。ただしそのままだと暗いので鮮やかになるように色調整している。この紺色/橙色は欧米でよく使われる。紺色/黄緑、紺色/黄色も同様で、これらの色は日本人からすると欧米を感じさせる。
カバー、オビともに表面加工はマットPPを指定。
大扉
カバー・デザインをリサイズして調整。著者名と出版社名をセンター合わせして並べた。スミ1C。
本体表紙
カバーの紺色に近い特色(DIC 184)を使用。カバーは表1のフォントを表4で全体的に袋文字にしたが、こちらはその折衷デザイン。特に意味はないが軽い遊び。1C。
見本誌が届く
IT系書籍は圧倒的に地色は白が多い中で、紺色/橙色はなかなか目立つ。書名を読まなくても何となくAmazonっぽいのもいい。初心者向けでもなくやや固い印象も内容に合っている。