
2022年2月。ロシアがウクライナに侵攻しました。当初短期終結が期待されましたが、2022年7月15日現在まだ収束の兆しは見えません。一般市民を巻き込む侵略戦争は、始めた方、侵攻した方が悪いに決まっています。今回の戦争もロシアが悪い。すぐに撤退すべきです。しかし自分の政治思想に反し、警告にも応じない、だから戦争を起こす。ロシア=プーチン大統領にも侵攻する正当な理由となる正義は有るわけで、その正義に沿って今回の戦争も始めたのです。
プーチン大統領は戦争をすることで多く人々が死に、周りの人達を不幸に巻き込み、人生が滅茶苦茶に破壊されることを知らないのでしょうか。第二次世界大戦によって、どれほど悲惨なことが起こったのか、当時の人達の人生を題材にして、戦争の悲惨さを訴える世界中で作られている多くの映画、ドラマ、音楽、ドキュメンタリーを観たことがないのでしょうか。いや観ているでしょう。それこそ日本に落とされた原爆による甚大な被害やどれほど悲惨なものなのかも当然知っているでしょう。では何故知っていて戦争を仕掛けるのでしょうか。それはそのような取り返しの付かないような悲惨な状況を作りたくて、意図的に起こそうとしているからです。知っていてやっているのです。だから「子供が○人死んだ」と被害を訴えても動じないわけです。それを狙っているのですから。最大の脅しですね。
では侵略戦争を防止するにはどうしたら良いのか。やはりこれは過去の歴史に学び、同じような事を繰り返さないようにするしかありません。元を断つのです。世界から大バッシングを受け、日本が起こした太平洋戦争も、大東亜共栄圏などといった、日本がアジア各国を欧米諸国の占領から開放するといった日本の身勝手な正義の上で行ったのも理由のひとつです。もちろん日本国民はそれを認めた上で支持しました。ロシアが戦争を始めた理由とよく似ていませんか。
今後日本が他国を侵略するような戦争は起こらないでしょう。ただし当時国際連盟が結局日本の暴挙を止められなかったのと同様、現在の国際連合がロシアに対して行っている制裁には効果がありません。第二次世界大戦で何も学んでいなかったということでしょう。
そういうわけで、この1年間太平洋戦争関連の映画、ドラマ、ドキュメンタリーは可能な限り観ましたが、映画に関しては以下3作品に匹敵するようなものはありませんでしたので昨年のままです。
【以上、2022年7月15日追記】
現在の政治や経済問題の基点は第二次世界大戦にある
戦後75年。年々、第二次世界大戦に関するテレビ番組は少なくなっています。
戦後、世界の政治問題、経済問題の多くは第二次世界大戦が発端となり、未だそれを引きずり、特に日本は敗戦国という負い目を抱え大きな問題となっています。つまり現在の政治問題、経済問題を理解するには第二次世界大戦のことを知る必要があります。最低限日本に関することは。
何故、日本はアメリカと戦争したのか。
日本はどこの国と戦争したのか。
一夜にして突然軍国主義国家になったわけではなく、そもそも国民が同意の上で軍国主義に進んでいったことを忘れてはいけません。それがマスコミの煽りによるものだとしても。
そうは言っても私達戦後数十年経ってから生まれた世代にとっては、歴史の教科書に載るような話であり現実感がなく、興味のない暗い戦争映画や戦争に関するドキュメント番組に興味がある人は少ないでしょう。
昔から「戦争は大事な人が失われので悲しい」「戦争は人生を破壊する」など個人の不幸や情緒に訴えるような映画、テレビドラマ、ドキュメンタリー番組は多く、それはそれで作品として戦争の悲惨さを訴える意味はあると思いますが、そのような作品ばかり観ていても戦争はなくなりません。「何故戦争になったのか」から知る必要があります。戦争にならないように、誤った時代を繰り返してはいけないのです。知識がないから「歴史は繰り返す」のです。
そこで興味はあり第二次世界大戦のことは知りたいけれど、情報があまりに多く、どこから学べばよいのか分からない人には映画から入ることをお勧めします。映画なので事実を元にしたドキュメンタリー作品だとしても、多くの人に観てもらえるような演出があり、飽きさせないような作りになっています。どれも名作でBlu-rayやDVDなどのソフトも手に入りやすく、テレビでも何度も放送されている作品です。
日本のいちばん長い日(1967年)
1945年8月14日から15日の玉音放送に至るまでに発生した、宮城事件の24時間の事実を元にしたドキュメンタリー映画。「東宝8・15シリーズ」第1作。
二・二六事件、五・一五事件などはよくテレビでも扱われますが、皇居を占拠し陸軍の一部がクーデターを起こした事件を知らない人もいるのではないでしょうか。終戦前日8月14日からの24時間が物語の中心ですが、終戦に至るまでの陸軍、海軍の衝突。何故広島に原爆が落とされるまで、ポツダム宣言による無条件降伏を受け入れなかったのか、戦後生まれの人には理解し難い国体護持とは何なのか、などがよく分かる構成になっています。
2015年にリメイクされましたが、この岡本喜八監督の1967年版が圧倒的な迫力です。
当時としてもトップクラスの俳優陣による演技も素晴らしいのですが、なんと言っても岡本喜八監督のテンポがよく、終始緊張感漂う演出が秀逸です。エンターテイメントとして魅了します。戦争をエンターテイメントなんかにするなと怒られそうですが、この映画を発端に第二次世界大戦に興味を持つ人も少なくないでしょう。私もその一人です。
岡本喜八監督自体は左派ですが、この映画の中では特に反戦を強烈に描くでもなく、人が死ぬことは悲しいなどというような情緒に訴えるわけでもなく、ひたすら当時知り得た事実を冷静に描いているので観ている方も思いがぶれないのが特徴です。むしろ最後には三船敏郎演ずる阿南陸軍大臣が自決する場面において、雨戸の隙間から差し込む朝日に照らされる姿が美しく描かれ、自決を賛美している印象すら受けます。
また笠智衆演ずる内閣総理大臣・鈴木貫太郎が、そのままなのではないかと思うほど似ていてはまり役です。あの朴訥とした演技は本人の素なのか演技なのか分からないほどです。
すでに50年以上前の映画なので、その後明らかにされた事実との齟齬はいくつかありますが、本質の部分は変わっていません。とりあえず1本観るのであればこの映画をおすすめします。
激動の昭和史 沖縄決戦(1971年)
「東宝8・15シリーズ」第5作目の作品であり、「日本のいちばん長い日」と同じく監督は岡本喜八です。
太平洋戦争で唯一の地上戦となった沖縄戦を描いた作品。こちらも「日本のいちばん長い日」と同様、事実を元にしたドキュメンタリー映画です。
爆弾で身体がバラバラに吹っ飛ぶ演出などはリアル感を出していて恐怖心を煽ります。かと言ってこの映画も「日本のいちばん長い日」と同様、情緒的な部分は少なく悲惨な場面も常に冷静な目線で描かれています。戦後50年以上経ち、その後判明した事実と異なる部分は多くありますが、そうとは言え本質的な部分は変わりません。「東宝8・15シリーズ」は全6作品ありますが、この岡本喜八監督2作品が飛び抜けて質が高いと思います。
ちなみに岡本喜八監督の2作品は、庵野秀明さんも好きな映画として挙げていて、二人の対談がテレビ放送されました。
トラ・トラ・トラ!(1970年)
アメリカ映画ですが、キャストとスタッフは日米合同であり、実質対アメリカ戦の発端となった真珠湾攻撃のドキュメンタリー映画です。
当初、日本側は黒澤明が監督するはずでしたが、大変ややこしいやりとりがあり、結局降板し舛田利雄と深作欣二両名が監督をしています。この辺りの事情はWikipediaに詳しいので、興味のある人は一読をおすすめします。
今でもアメリカでは「真珠湾攻撃は宣戦布告なしの卑怯な攻撃」であるとの認識が一般的ですが、実は日本から事前通告はしたが、アメリカ軍に連絡がうまく伝わらなかったという部分をアメリカ視点で時間経過と共に丁寧に追っています。微妙ですがとても重要な部分でもあり、書籍など文章で読むと前後関係などが非常にわかりにくいのですが、適度に演出された映像で観るとわかりやすく理解しやすくなっています。こんな単純な行き違いが、あれほど大規模な戦争に発展することになろうとは思いません。
一番の見所は最後30分、真珠湾に配備されている戦闘機や格納庫、軍艦がひたすら攻撃され、破壊され続く映像です。当時はCGなどはないので、実際に練習機などを実際に爆破したようですが、人がかなり近くを逃げ回っていて、実際にけが人が出たらしいです。観ていて恐怖を感じます。それほどリアルです。
映画公開後、この映画がアメリカにとって不利に描かれているという理由で、後年「ミッドウェイ」(1976年)という映画がアメリカで作られますが、「トラ・トラ・トラ!」からの爆破特撮シーンが多く流用されています。表現もマイルドになり、内容もつまらなくなってしまいました。
番外編「ザ・パシフィック」(2010年)
ガダルカナル、ペリリューから硫黄島、沖縄に至るまでの太平洋戦争の事実を元にしたアメリカの全10話の連続ドラマです。
アメリカ視点で対日本戦をドキュメンタリー的に描いた映像作品は意外とないのです。このドラマには特に主人公というものはなく、敵として日本兵は出演していますが、日本人視点が一切ありません。無防備で突撃してくる日本兵に狂気を感じるアメリカ兵の心理や、亡くなった日本兵の荷物や金歯まで略奪するリアルな場面まであります。
顔面を破壊し、金歯を取り去る冷血なアメリカ兵の役にはあのボヘミアン・ラプソディ(2018年)でフレディー・マーキュリーを演じたラミ・マレックです。
アメリカ軍からの戦争被害者として日本人を描いた映画やドラマは日本にはたくさんありますが、日本人を敵として描いたアメリカ軍視点のドラマとしては、かなり真実に迫っているのではないでしょうか。
まとめ:一人一人が知識を持てば
ドキュメンタリーとは言っても映画なので当然演出は入りますし、事実とは異なる部分も多くあり、映画で描かれている天皇や当事者の本心までは誰にも分かりません。しかしこれらの映画を切っ掛けにして、第二次世界大戦に興味を持ち、本を読んだり、ドキュメンタリー番組を観たり、各資料館などを訪ねたりして、一人一人が知識を深めてゆけば、本当の意味で戦争や国家間の紛争が少しは回避できるのではないでしょうか。
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