デザイナーが契約を切られる時

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ドラマ「しょうもない僕らの恋愛論」を観て

ある夜テレビを観ていたら、クライアントから無理な修正案を出され、先輩に相談をしている場面が偶然放送されているのを観た。2023年冬期ドラマとして放送中の「しょうもない僕らの恋愛論」だった。

しょうもない僕らの恋愛論|読売テレビ
優柔不断な男と、まっすぐな少女と、素直になれない女が出会ったとき、あの日に残した想いが、もう一度動き出す。男女3人の揺れ動く感情が繊細に紡がれていく、等身大のヒューマンドラマ

主人公のデザイナー・筒見拓郎(眞島秀和)は、今まで担当してきたマンガの装丁を、突然後輩のデザイナーに替えられショックを受ける。筒見のデザインは多くの人から絶賛され、賞も取っている。何故自分が切られたのか悩む。そして現場から離れ経営に参加することを望まれ、周りの同僚が独立して成功する姿を見て自分の将来を考える。基本は大人の恋愛ドラマなのだが、デザイン制作で試行錯誤する場面などもあり同業者であれば楽しめる。幼なじみの森田絵里(矢田亜希子)と女子高生・谷村くるみ(中田青渚)の二人に同時に告白され「俺ならどっちを選ぶか。迷うなあ。」などと、「しょうもない」妄想をしながら毎週楽しみに観ている。

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「デザイナーが契約を切られる時」とは

ドラマの中でクライアントから仕事を切られる場面があり、主人公は大きなショックを受ける。同じことを私は何度も経験しているし、友人のデザイナーも同じ経験をしている人が多く、その度に大きなショックを受ける。
ではどのような時に切られるのか。これにはいくつかのパターンがある。

  1. 掲載媒体がなくなる
  2. デザイナーを変更する
  3. コスト削減

1.掲載媒体がなくなる

具体的には以下のような場合である。
雑誌の表紙デザインを担当していたが、雑誌が休刊という名の廃刊になった
ある商品のプロモーションをするためのWEB広告を定期的に受けていたが、商品が製造中止になった。または発注者である広告代理店が廃業した。

これらはデザイナーには対処のしようがない。「来月号で雑誌は終わりなんで」と言われたらデザイナーとしては、「あっ、そうですか」としか言えない。これはあきらめるしかないだろう。

2.デザイナーを変更する

長い間定期的な広告や雑誌を担当していると、より売上げ増加のため、またはターゲット層変更のために行われる戦略の一つがデザインのリニューアルである。これにはさらに2通りあり、旧来の同じデザイナーにリニューアル案を出せる場合。もう一つはどうしてもデザイナーには志向というものがあるため思い切って別のデザイナーに替える場合。多いのは後者である。この場合も「今までとは異なる若い女性をターゲットにしてアピールしたく、同世代の女性デザイナーに今度から制作してもらいたくて」と言われたら、「あっ、そうですか」としか言えない。これもあきらめるしかないだろう。

3.コスト削減

実はデザイナーが切られる理由はこれが一番多い。
例えば、毎月10万円で発注しているデザイン費を7万円にしたい。しかし毎月発注しているデザイナーに「3万円下げてくれ」とは言いにくい。「そのデザイナーでなければ出来ないデザインでもないし、余計な摩擦や交渉を避けたい」。そこで7万円で請けてくれる新たなデザイナーに発注する。
もう少し手の込んだ事もある。これは「2.デザイナーを変更する」にも関連してくる。ある日発注者は、毎月同じデザイナーに発注していたWEB広告制作に対して、デザイン・コンペを突然開催する。制作費の話はせずに、理由は「リニューアルが目的」だと告げる。何人かのデザイナーにリニューアル・デザイン案を提出させ、結果最初から決まっていた別の新たなデザイナーを7万円で採用する。完全に出来レースならぬ出来コンペだが、元のデザイナー、新たなデザイナー共に傷つかない。しかしこれをやると元のデザイナーは何かおかしいと気がつくものである。そして不採用になり傷つく。

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デザイナーの気持ち

どんなデザイナーでも、今まで定期的に発注を請けていたものが無くなれば、大きくショックを受ける。これは有名無名関係ない。その時デザイナーは「自分のデザインのどこがいけなかったのか」と先ず自分を責めるだろう。そして次は「毎月の売上がなくなる」という現実的な金銭問題と向き合うことになる。
しかし定期的に受けていた仕事が切られる理由の多くは、上記3つがほとんどだ。多くの場合デザインの質は関係ないので自分を責める必要もない。単発のデザイン制作であれば、1度デザインして発注者が気に入らなければ次の発注がないだけの話だが、定期的に発注する案件に対しては、そのデザイナーの作風が気に入っているから発注するのである。

デザイナーとしての心構え─深く考えない

「心構え」なんて言うと大げさだが、単発でも定期でもデザイン制作を請負ったら、永遠に発注があるとは思わず、いつかは終わることを念頭に置いておく。諸行無常。私のようなレベルになると、切られた経験が何度もあるのでそういう心構えでいる。大きな期待をしないようになるので、切られたときの落ち込みも小さい。しかしまったく落ち込まないのかというと、そうではないのだが。

そして「売上減少」に対しては、定期的に請けていて一定の売上があることに満足せず、常に新規開拓営業し、複数の発注先と取引する他ない。いつその会社に切られるか分からない。特にフリーランスが、1社のみと毎月100万円の取引をしていて、突然切られ仕事がゼロになるような話はよく聞く。取引先がゼロになってから営業しても遅いので、常に営業や新規開拓はしておく。

今までの定期的な発注が突然来なくなっても落ち込むことはない。それは必ずしもあなたのデザインが悪いからではないからだ。

原作は読んだことがないので、ドラマを最終回まで観たら、読んでみたいと思っている。

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