デザイナーは、Macでないとダメなのか

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制作環境のイメージ

かつてMac(Macintosh)かWindowsかを巡り、血で血を洗う争いが各地で繰り広げられていた。2023年の現在では信じられない闇の歴史である。しかし今でもデザイナーと言えばMacという印象が一般の人でも多いのではないだろうか。
これからデザイナーになろうとしている人は、どちらのOSを使えば良いのだろうか。デザイン制作を行う上で、MacとWindowsの間に差はあるのだろうか。チラシ、パッケージ、書籍など紙媒体のアナログ系デザインと、WEBやアプリのデジタル系デザインの両分野を現役で行っている、稀有なデザイナーが説明する。

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デザイナーはMacとWindows、どちらを使用するべきなのか

結論を言うと、
どちらでも良い

好きな方を使えば良いのである。
私の関わった現場のOS環境は、印刷が関係するアナログ系のデザイン現場では、完全にMac環境。
WEBやアプリなどデジタル系現場の場合は分かれていて、デザイン専門の事務所などは80%位がMac、アプリなどの制作現場は95%がWindows(iOSアプリ制作の場合はMacのみ)。デジタル系の現場では、未だデザイナーはエンジニアに比べるとマイナーな存在で、ほとんどWindowsと思っても良い。
このように、扱うデザインの種類によってMacとWindowsがはっきり分かれている。何故なのだろうか。DTPでWindowsを使ってはダメなのだろうか。逆にWEBアプリのUIデザインにMacを使うと不利益を被るのだろうか。これにはDTPの歴史が大きく関わっている。

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当初デザイン・ツールとしてはMacしか選択肢がなかった

インターネットが広まる前から、パソコンでデザインはできた。それが実際の業務に使われていたのか否かは別として。実際のデザイン制作業務に使えるツールとしては、安価で構築が簡単なDTP(Desk Top Publishing)工程が確立してからだろう。Macの画面上で作られたデザイン・データを印刷所に入稿して、デザイナーが意図した通りの印刷物が完成する。今では当たり前の工程だ。しかし以前は、チラシ1枚をデザインして印刷するには、現在でもメインのアプリケーションであるAdobeのIllustratorを使っていたのだが、Windows版は存在せず、Mac版しかなかった。印刷物をデザインするプロに選択肢はなくMacを使う意外に方法はなかった。
Windows版のIllustratorが初めて登場したのはヴァージョン4.0から。これでWindowsもプロのデザインツールとして使用できたかというと、まだ道は遠かった。当初Windows版は、プリンタドライバーによって、フォントの種類や文字詰め情報が異なるという、全くプロのツールとしては使えないものだった。要するに使うプリンターによって、仕上がりが異なっていた。ただし、Mac版とWindows版の間でドキュメントのやり取りは出来た。AIファイルとAIファイル、PSDファイルとPSDファイルなど。当然と言えば当然なのだが。

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OpenTypeフォントの普及

フォントのアウトラインを取れば、フォント問題は解決する。初代DTP三種の神器、Illustrator、Photoshop、QuarkXPressのうちIllustrator、Photoshopはそうして、フォント問題を回避できたが、QuarkXPressだけはアウトラインを取ることができず、Macを使わざるを得なかった。
フォントの問題は少し複雑な話になるのだが、簡単に言えば、昔はMacとWindowsの間にフォント互換性がなかった。TrueTypeがあったではないかと突っ込まれそうだが、当時DTPでTrueTypeフォントは、アウトラインを取らない状態での使用を推奨されていなかった。

しかし少し経つとOpenTypeフォントという、MacとWindowsの間で、完全互換があるフォントが実用的になる。AdobeもQuarkXPressに対抗するInDesignを発売し、一気に利用が広がり組版のアプリではInDesignが圧倒的なシェアを取り今に至る。
この両方の利用拡大により、DTP業界はMacとWindowsの完全互換が取れるようになった。

Windows DTP

Windowsのイメージ

当時は私もDTPによるデザインのみだったので、使用機器も全てMacだったが、今よりも作業環境の進化が速く、機器も数年に一度買い換えないとならない状態であった。しかしMacや周辺機器は高価。21インチのブラウン管モニターを使用するために、9万円のグラフィックカードを使わないと映らないような世界。ゲームをやるわけでもないのに。

そこで私はより安価にシステムを構築出来る、Windows DTPに挑戦してみようと考えたのである。しかも安くするには自作が良いと。もし失敗しても、一応現役のMacがあるので心配はない。
結果、WindowsでDTP環境を作り、デザイン制作をし、納品したが全く問題はなかった。当時PDFによる入稿はほとんど行われておらず、アウトラインを取り、リンク・ファイルを添付したAIファイル、PSDファイル、そしてアウトラインを取らないままのINDDファイルを扱った。もちろんOpenTypeフォントを使用した。
ただ意識の低い雑誌編集者に、Windows版InDesignで制作したと伝えると、拒否された事が何回かある。こちらは今まで不都合は無いことを伝えても受け入れてもらえなかった。

それから20数年間の私のDTP環境は、Windowsで問題はない。

何故、デザイナーはMac派が多いのか

プロデザイナーの環境は、上述の様にMacしか選択肢のないDTPから始まった。その流れで今でもDTPの現場は、ほぼ完全にMac。エディトリアルでも、チラシ制作でも、ポスター制作でも、SPツール制作でも、パッケージ・デザインでも。今まで私の他にWindowsでDTPを行っているプロのデザイナーには会ったことがない。そしてこの「デザイナーはMac」というDTP/アナログデザイン業界標準の空気が、Appleのブランディングも後押しし、デジタル系のデザイナーにも受け継がれているのである。これは日本だけではなく世界的な傾向だろう。

2023年 デザイナーのOSは? Win? or Mac?

私自身、現在はデジタル系案件の方が多いが、アナログ系もそこそこある。特に2020年後半からは。
デジタル/アナログ構わず、様々な種類の案件をこなしている現役のデザイナーの感覚で言えば、現状は以下のようになっている。

デジタル系現場の場合

Web、スマートフォンなどデジタル系の現場はどうだろうか(ゲーム業界は分からないので除く)。
特にデジタル系はエンジニア(プログラマー)と分業で作業をする事が多く、エンジニアはほぼWindows。そうなると必然的にその上流工程にいるデザイナーもWindowsが望ましい。もちろんMacでも拒否される事はないだろう。
アプリのUIデザインを制作したり、プロトタイプを作ったりするデザイナーは、以前プロトタイプツールと言えばMac版しかないSketchで制作していたものだが、現在はWindows版もあるFigmaが主流なのでOSは関係ない。私もWindowsでFigmaを使用してアプリやWEBデザインを制作している。
デザイン制作をする際に、MacでもWindowsでもデザインの質やアプリの扱いに差異はない。どちらを使っても問題ないが、エンジニアと協業するのならWindowsの方が歓迎されるだろう。

アナログ系現場の場合

アナログ系の現場はどうだろうか。MacでもWindowsでも現在はフォントの問題が以前よりもさらに改善され、気にしなくても良いレベルだろう。印刷入稿も今は、どの印刷所でもPDF入稿が原則なので問題は全くない。後は回りのDTPデザイナーが、皆Mac環境の中でWindowsを使い続ける勇気があるかどうか、そういうレベルの話である。

私の制作環境

自作デスクトップPCによる、完全なWindows環境である。アナログ・デザインもデジタル・デザインも。
ちなみにUIをデザインする際にSketchは使用しない。使ったことがない。今までSketchでの制作指定はあったが、FigmaかXDでも可能だった。年々Sketch限定での制作は減っている。
しかしラップトップPCはMacも所有している。これは時々、Mac利用者から原稿や素材をWindowsで受け取ると、ファイル名が文字化けしているからである。それとMacのデザイナーからドキュメントをもらうと時々Macでしか使えないType 1フォントを使用していて、フォントが添付されていてもWindows版のアプリでは使えないからというのもある。
MacでもWindowsでも、デジタル系のデザイナーが、フォルダ名やファイル名に日本語2バイト文字を使うことはないのだが、アナログ系では気にしていないのか良くあるので注意が必要。

まとめ

Macは今でもWindowsに比べると割高だ。これからデザイナーを目指す人がいて、その人に金銭的な余裕がないのなら、迷わず割安なWindowsを購入する事を勧める。ゲームをやるので無い限り、それほどハイスペックのPCは必要ない。使い勝手も悪くない。むしろデザイン・ツール以外ではWindows専用のソフトの方が多い位だ。
もしデザイン納品データはMacでないとダメだと勘違いしている人がいたら、この記事を読んでWindowsでも問題ない事が分かれば幸いである。

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